神授国騒動記
□5話
3ページ/21ページ
レイが出て行って既に数時間が経過していた。
何時の間にか暗い雨雲がたち込めていた外は本格的に雨が降り始めていた。
「で、お前達は何時までここにいる気だ?」
鬱陶しい雨の音を聞き取りながらシェルは未だこの部屋にいるクロウ、ユラ、ルリの3人に声をかけた。
するとにっこりと微笑んでユラがすかさず答えた。
「私とルリにはマナ様のお世話と身辺警護がありますので」
当然というように告げた姉のその発言にルリも同意して力強く首を縦にふった。
「いや〜。この雨だと演習とか無理だし」
暇つぶしだというのをその言葉の中に潜ませながらクロウはゆったりと寛いでいる。
それに対してシェルは顔を引き攣らせた。
「だったら屋内でできる事すればいいだろうが。それからユラとルリも、気持はわかるがそんなに入り浸ってたらあやしまれるだろ」
「もうとっくにあやしまれていると思いますわよ」
平然とそう言ってのけるユラにシェルは力なく肩を落とした。
確かにウォルトゥスの洞察力だと以前話したようにもう既にユラとルリがこちらの陣営だと気づかれていてもおかしくはないのは事実である。
しかしだからといってばれていない可能性が少しはあるかもしれないのに、その可能性まで潰してしまうのはどうかとも思う。
そう思ってまた何かシェルは言おうとしたが。
「ですが。やはり私はユラ達が一緒にいてくれるのは嬉しいです」
にっこりと微笑みながらそう言ったマナの言葉にシェルは思わず言葉を飲み込んでしまった。
マナとしては長い間安否の知れなかった友人が一緒にいるのは本当に嬉しいのだろう。
そう考えるとこれ以上彼女達がここに居る事に否を唱える事は憚られた。
「ありがとうございます。マナ様」
マナの言葉ににっこりと(まるで少し勝ち誇ったような)微笑を見せてユラがお茶を注ごうとした時だった。
その手がぴたりと止まり、ユラの雰囲気が一瞬のうちに様変わりした。
ぴりぴりと彼女の周りの空気が重く鋭いものに変わった。
「ユラ・・・?」
そんなユラの変化を感じ取ったマナが声をかけたがユラは返答はしなかった。
そのかわり彼女は身にまとう空気を少し遅れて彼女と同じようなものに変えていた妹に剣呑な声をかけていた。