神授国騒動記


□4話
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どちらかといえば和やかな空間だったそこに不意にコンコンという扉をノックする音が聞こえてきた。

その音に全員が扉の方を振り返る。

可能性として高いのはレイかクロウのどちらか。

しかしレイはここのとろこも何故か家の方に帰ることが多く、またその時間も徐々に長くなってきていることから顔を合わせる機会が少ない。

それでも仕事はきちんとしている所はさすがというべきか。

そうなるとやはりクロウである可能性が高い。

目の前に並べられている菓子類。

甘いもの好きである彼がこれを目当てにやってこないはずがない。

そう思ってクロウであろうと予想をつけたが、その予想はあっさりと裏切られる事になる。

「失礼致します。お茶をお持ちさせていただきました」

聞こえてきたのは落ち着いた女性の声だった。

その声を聞いてシェルとバックスの2人は予想に反したその意外さに驚く。

しかしそれ以上に今の状況はまずかった。

何しろマナは今朝からずっと部屋に居た為に、髪色と瞳の色を変化させる薬を飲んでいない元の青藍と深緑の瞳なのだ。

この姿をみられるのはまずいと、すぐに薬を飲むように言おうとしたが、目をやったマナは呆然として大きく目を見開いて扉を見つめていた。

その横では何故かルリまで同じ様子でいる。

「ルリ・・・この声・・・」

「はい・・・」

何やら2人はぽつりと何かに気づいたように声を掛け合った。

その2人の言動にシェルは訝しげに首を傾げる。

「・・・茶なんて頼んでないぞ」

その3人の様子を見て咄嗟にこの場を乗り切ろうとバックスが扉の向こうへと声をかけた。

しかし扉の向こうの人物は全く動じずにきっぱりと告げた。

「いいえ。このお時間は確かにいつも紅茶をのんで気分を落ち着かせておられたはずです」

「えっ・・・?」

その意味深な言葉にシェルが声を漏らすと同時に、部屋の扉は主の許可なく開かれた。

そこに現れたのは頭を下げた女官の姿だった。

そして彼女は頭を上げてにっこりと微笑むと後ろ手に部屋の扉を閉めて口を開いた。

「少なくとも、国におられた頃のマナ様はそうであったと記憶しています」

「ユラ!!」

「姉様!!」

その顔をはっきりと見た瞬間、マナとルリの2人から歓喜の声が上がった。
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