神授国騒動記


□3話
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帰還祝いの宴から数日後のある晴れた日。

鋭い金属と金属のぶつかり合う音が何度も辺りに響き渡る。

ここは城内にあるクレマテリス王国軍の訓練場。

その中でも選りすぐりの精鋭部隊『緋晶』に特別に与えられている専用訓練場だった。

そこでその『緋晶』の隊員である軍屈指の精鋭達を息一つ乱さず次から次へと取替え相手にしている人物がいる。

「上段の構えが甘い!もっと姿勢を安定させろ。次!」

「は、はい・・」

その人物を相手にした隊員達は、否相手をしたともいえないほど一瞬のうちに剣を弾き飛ばされている彼らは、1人1人が自分達の剣捌きについて注意を受けている。

たった一太刀きり結んだだけで良く解るなと思うものは誰1人としていない。

解った風な口をと言う者はもっとだ。

何故なら彼にはそれだけの確固たリすぎるほどの実力と、何よりも彼らからの信頼があるからだ。

「凄い・・・」

そんな光景を眺めてマナはただ一言目を見開いて感嘆の声を上げた。

先程からずっと見てはいたが、ようやく絞り出た声がこれだったのだ。

そのマナの様子を見ていたクロウが、どこか自分の事のように誇らしげに声をかける。

「どうだ、姫さん。凄いだろ。シェルの剣の腕前は」

「ええ。バックス殿から伺ってはいましたが、これほどまでとは・・・」

目の前で先程から立ち合っているシェルの剣の腕前は本当に凄すぎる。

さすがは「剣聖の極み」と称されるだけの事はある腕前だ。

マナの言葉にますます気を良くしたようなクロウは更に何か言おうとする。

「そうだろ、そうだろ。だけどなシェルは本当は」

「ああ。いた、いた。クロウ君」

クロウが何か言おうとした丁度その時、2人の後ろから明るい声が聞こえてきた。

「キリウス将軍」

そこに居たのはにこやかな顔をした黒髪、藍色の瞳の30代くらいの男性。

マナの会ったことのない人物だが、なんとなくその面差しに見覚えがあるような気がする。

どこで見覚えがあるのかとマナが考え込んでいると、クロウと話していたその人物はマナのほうへと向き直り好意的な笑顔を浮かべて頭を下げた。
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