神授国騒動記
□1話
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先程まで話していた3人はマナの必死な声に反応してそちらを振り返ってみると、先程まで寝ていたはずの人物は起き上がって泣きそうな表情でこちらを見ていた。
「どうやらお姫様のお目覚めみたいだな」
そう言ったのは周りの2人に比べて歳の離れた40代くらいの男性だった。
マナに近づいてき、額に手をあてると確かめるように頷いてみせた。
「ふむ。熱もないし、大丈夫みたいだな」
突然額に当てられ離れた言った手に戸惑いながらマナはその人物の顔をじっと見つめた。
その視線に気づいた男性は微笑んで自己紹介をする。
「俺はバックシーズ=アスクリオ。クレマテリスの軍医だ。バックスで良い。あ、あっちのはシェルとクロウな」
「あっちのって・・・」
「なに、そのどうでもよさげな紹介・・・」
バックスのいい加減な紹介にシェルは少し顔を引き攣らせ、クロウは少し呆れたように目を細めていた。
「岸に流れ着いたあんたをシェルの奴がみつけてここまで連れてきたんだ」
「あ・・・それはお世話になりました」
自分がここにいる経緯をきいてマナはぺこりと頭を下げて素直に礼を言う。
そして顔を上げた瞬間ふわりとしたその微笑をむけられ、シェルは思わず顔を赤くしてしまった。
その様子にバックスはにやにやとした表情でからかうように声をかけた。
「なんだ〜?シェル。顔が真っ赤だぞ。さては惚れたか?」
「ばっ!そんなのじゃないって」
「おーい。それじゃあ、逆に本当に惚れてるみたいだぞ」
バックスの言葉に慌てるシェルに、さらにクロウまでもからかうように告げる。
「クロウ!お前もか!」
「いや〜。良いじゃないか青少年。こんな美人なら惚れても不思議じゃないぞ」
「黙れエロ親父」
さらにからかってくるバックスにシェルは引き攣った表情で彼をにらみつけた。
それをまったく気にすることなく笑っていたバックスだったが、不意に真面目な表情をしてマナのほうを見た。