神授国騒動記
□序章
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窓から見える数多の炎と、様々な感情入り混じるたくさんの人の声に、信じられない思いでよろりと体勢を崩してしまった。
「マナ様!大丈夫ですか?!」
慌てて自分の身体を支えながらごく1部の者しか呼ぶことのない愛称で自分を呼んだ良く知るその声。
普段なら安心するその声にも現状をあまり受け止める事ができないでいるマナは、恐る恐るといった様子で自分を支える人物を振り返り見た。
「だい、じょうぶ、だよ」
「・・・そんな青い顔をされて何が大丈夫ですか」
途切れ途切れで返事をすると今度は後ろの方からさらに別の声が聞こえてきた。
叱るような、それ以上に酷く心配するようなその声にそちらを見てみると、目を細めてやはり心配そうにこちらを見ている姿があった。
「さあ、マナ様。こちらへおかけください」
「ありがとう・・・でも大丈夫だから」
しめされた椅子に礼を言いながらも、マナはそれを断り視線を窓の外へと移していく。
突如として起こった火の手や外から聞こえてくる争うような人の声、そして剣同士がぶつかり合うような音に、マナは眼下で暮している自国の民達の安否が気にかかって仕方ないのだ。
「一体どうしてこんな・・・」
「解りません。とにかく報告が入るのを待つしか・・・」
「姉上!!」
天井の一部がはずされ降ってきた新たな声にそちらを一同が振り返れば、先程までそこにはいなかった新たな人物が姿を見せていた。
白いコートに付いているフードをすっぽり被り、その顔はの半分は白い仮面で隠されていた。
そのコートにも仮面にも、1箇所だけ蒼い月が描かれている。
しかし誰もその人物の登場にも、その出で立ちにも驚く事はない。
それは周りにいる者達も殆ど同じ格好をしているためだ。
そして新たに現れた彼に報告を促した。
「状況は?」
その声を聞くと同時にフードをとりさり、仮面を外した彼は眉間に皺を寄せた表情で答えた。
「状況もなにもないよ。下の街は見たままに攻め入られてる。攻めてきてるのは・・・クレマテリス軍だ!」