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□ディエス編
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これは決して自分達だけのせいではないはずだ。

2人は心の中でそう思い続けていた。

正座をしながら。

しかも彼らが正座しているのは土の上だ。

それもただの土の上ではない。

大量の水でどろどろになった泥、泥水の上にだ。

勿論、彼らも好き好んでこんな所に正座しているわけではない。

だがしないわけにはいかなかった。

強要されたわけではないが、それくらいはしなければと本能が告げていたのだ。

逆に言えば未だこうして正座していられて良かったというべきか。

これは奇跡に近いのかもしれない。

2人の心境はまるで死刑判決をまつ囚人のような状態だ。

そしてそれはあながち間違ってもいなかった。

目の前にはあからさまな殺気を向けた自分達の主君がいるのだから。

「ふざけるなよ。馬鹿共・・・」

「死ね」と言われなかっただけまだマシだろう。

それもいつ言われるか解らない。

それほどディエスの機嫌は急降下の一方だった。

その理由は彼の腕の中にいるエレシュにあった。

その姿は全身泥だらけという無残な姿。

これがディエスの不機嫌の原因だった。

何故エレシュが泥だらけかと言うと。

それは事故としか言いようがない。

魂陵界に大量の雪が積もった。

当然これはディエスの意思で、その雪の処理をさせられるのは哀れな死神達なのだ。

その雪の処理も随分と終わったが、溶けた雪のせいであちこち濡れた場所が多かった。

普段乾いた地面も雪の水をすってどろどろの状態になるくらいに。

酷い所になると膝くらいまでつかるのではという泥水状態だ。

だがそれは何時もの事。

慣れた死神達は気をつけ、泥水を避けながら処理を続けていた。

そこに様子を見に来たエレシュ。

彼は普通の死神達と違って通常雪の処理になど参加しない。

だから確かに慣れてはいないのだが、自ら間違って泥水に身体を沈めるような真似はしない。

一応慎重に動いていた、はずだった。

本当にあれはただの不注意だったのだ。

シヴァとセケルの身体が少し当たった程度でバランスを崩したエレシュが泥で脚を滑らせ、そして泥水の中に落下したのは。

結果エレシュは泥だらけ。

その瞬間、シヴァとセケルは顔面蒼白となった。

もっと言えば少しだけ死を覚悟した。

落ちるなら自分達が落ちておけばよかったとも思った。

だが時すでに遅く。

彼らの目の前には怒気と殺気をこれでもかというくらい露わにしたディエスが現れていたのだ。
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