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□シェル編
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どうしてこんな事になった。
それはシェルの心の叫びだった。
目の前には見慣れている軍部の屋外訓練場があった。
それは良い。
問題なのは、異質なのはその周りで繰り広げられている光景だ。
何故こんなに見物人が多いのか。
しかも軍部以外の人間まで集まってきている気がする。
しかも何故かちらほらと屋台のようなものまであって。
「なんだ・・・このお祭り騒ぎは・・・?」
「一応・・・全員厨房の人間です」
何故か屋台をやっている人間について言っているのだろう。
隣りで自分と同じように遠い瞳をして、自分と同じような事を考えているのであろうアキの言葉が聞こえてきた。
彼の言うとおり、良く見れば確かに全員何処かで見た事のある顔だ。
アキのような立場か厨房の場全体を取り仕切る料理長ならともかく、厨房の人間1人、1人ときちんとした面識はないが、おそらく廊下ですれ違ったりしたのだろう。
しかしその厨房メンバーが何故屋台などを今やっているのかは謎だ。
だがそのメンバーの中に何故今アキがいないのかは解っている。
城の厨房の中でも最早1番の腕前だと知れ渡っている彼があそこに参加せず、今シェルの隣で話をしている理由それは。
「なんで、こうなった・・・」
「なんか・・・すいません。陛下・・・」
「いや、お前のせいではないし。・・・お前も大変だろう」
謝って、逆に同情の言葉をかけられたアキはなんだか泣き出してしまいそうだった。
「ああ、もうっ。あの馬鹿の頭を殴りつけてやりたい」
あの馬鹿、というのは紛れもなくレイの事だ。
元凶は姉だが、姉には出来ないので、どうしても矛先はレイへと向かうのだろう。
「悪い。俺にはどうする事も出来なかった」
「良いですよ。陛下のせいではありませんから・・・けど」
1度溜息をついてからアキは背筋を正した。
「手加減はしませんから」
そう言った彼の瞳は、最早現実を嘆いているモノの瞳ではなかった。
言うなれば厳しい戦士の瞳、とでもいうモノに変化した彼は、シェルの下を離れ、姉達の元へと歩いて言った。
そう、「達」。
実は今回シェルの相手をするのはユラだけでなない。
ルリとアキの妹弟も一緒だ。
確かにユラは「自分1人と手合わせを」とは言っていなかった。
しかしこれはどうなのだろうか。
よりにもよってあの姉弟がそろい踏みと言うのは。
これではすがのシェルもあまり手加減など出来るはずがない。
事実彼は今件を2本持っていた。
しかしこれはユラたっての希望でもある。
「本気」の実力を見たいのだから、絶対に二刀流で来いという。
「遠慮など要りません。こちらは3人なのですから」
そんな事をにっこり黒い笑みを浮かべながら言ったユラを忘れることはできない。
確かに遠慮していては逆にこちらがやられかねない。
目の前の現実を受け入れ、シェルは溜息をつくと3人に向き直った。