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□マナ編
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「凄いな。マナ」

正直な感想を言えば。

「えっ?何がですか?」

首を傾げ、本気で不思議がられてしまった。

その反応から見てもマナにとっては出来て当然の事だというのが解る。

解れば解ったで、シェルは自分がんあだか情けなくなってきた。

近くで聞こえた小さな笑い声はとりあえず無視することにした。

「・・・ありがとうな。おかげで助かった」

不甲斐なさを謝るのもなんだか違う気がしてシェルは礼を言った。

「とんでもありません。自国の民の為に何かをする事は当然のことです。それに、シェル様のお役に立てたなら私はとても嬉しいです」

マナのその言葉に一瞬面食らった後、シェルは喜びをかみしめた。

旧クレマテリスの民をはっきりと「自国の」と言ってくれる事がとても嬉しい。

当然の事と言えば当然の事なのだが、つい最近まではマナにとってはあくまで「隣国の民」だったのだ。

それをもう完全に「自国の民」として受け入れてくれている事がとても嬉しい。

それは結局お互いさまなのだが、やはり嬉しいものは嬉しいのだ。

そして何よりも嬉しいのは、マナが自分の役に立とうとしてくれた事が、役に立てたことを喜んでくれている事がとても嬉しい。

「寒いはずなのに熱いですねぇ」

空気を読んだレイがわざとらしくそんな事を口にした。

ぴくっと反応したが、今はマナから与えられあ嬉しさの方が勝っているのでやはり何も言わない。

「それより姫さん。あれの事は言わなくて良いのか?」

その空気に水を差したのはクロウだった。

無粋、と言えば無粋だが、何故かそわそわしている彼を見ればそれが気になって誰も責められなかった。

「あっ!そうでした」

クロウの言葉でこちらも思い出したのか、マナはぽんっと手を打つ。

そして次第にクロウ同様にマナもそわそわしだした。

「一体、なんだ?」

「そうですね。クロウは何故か上機嫌ですし」

「ふふふっ。それはなー。見れば解る。な、姫さん」

「はい」

2だけで何やら解ったように楽しそうにしている。

その事実にシェルは少しむっとなった。

「クロウ。マナ様と仲良くするのは良いですが、ほどほどに。シェル様が妬いて処罰されかねませんよ」

「なっ・・・!お、俺は別に・・・」

からかいを含んだレイの言葉にシェルは本気で動揺した。

「ははっ。それはこえーな」

「あのな・・・お前まで・・・」

クロウがマナにそういう気がないのは解っているし、当然処罰なんてものはするつもりはない。

しかし確かに少し妬いた事は事実だ。

ふとマナの反応が気になって視線を向けて見ると。

「シェル様が、妬いて下さって・・・」

完全に喜色を浮かべて感動と幸福に浸っていた。

そんなマナを元に戻すのにまた時間がかかり、本題を漸く聞けたのは随分後の事だった。
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