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□マナ編
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それは随分と冷え込んできたある日のことだった。

旧クレマテリス王国王都にして、クレイリア帝国仮の首都に珍しい雪が降った。

「随分と積もりましたね」

朝も早くから机に向かって書類の山へと難しい顔をしているシェルに向かってレイはそんな事を口にした。

火神の守護を受けているためかのこの辺りには雪が降ること自体珍しい。

ましてやこれだけつもりと異常気象の類にもなりかねない。

しかしこれというのもアイリシアとクレマテリスがクレイリア帝国という1つの国としてまとまった何よりの証拠なのかもしれない。

つまりは水神と火神が揃ってこの国の守神となった影響。

その初めの冬と言う事で、水神が景気良く降らせて見せたのかもしれないという予想が立つ。

そしてそれを火神も止めなかったのだろう。

シェルはあの神々を自分とマナに置き換えるとそう簡単に結論付けられてしまった。

しかしそれとこれはまた別の話。

雪などめったにお目にかからない旧クレマテリスの民の混乱は大変なものだ。

朝も早くから色々な嘆願書やら要請書やらが来て、シェルはいつもよりも早くたたき起された。

目の前の人物に。

「まあ、被害らしい被害はあまりありませんし。少し交通面などで障害はでていますが」

「不幸中の幸いか・・・」

そうは言ってもシェルにとってもこういった事態の処理は慣れているはずがない。

こういう事は旧アイリシア側の方が良く対処出来ると思うのだが。

「失礼します。シェル様」

こんこんっとノックした後、こちらの返事を待たずにマナが顔を見せた。

ついでにクロウも。

何やらクロウは何故か楽しげな様子だ。

シェルとしては何故この2人が一緒なのかが解らない。

「シェル様。お疲れではありませんか?」

大丈夫ですか、と尋ねて来るマナにシェルの疲れは随分と癒された。

「ああ。大丈夫だ。とはいえ・・・何処から手をつければいいかと思って」

「・・・こちらはあまり雪は降らないらしいですから。慣れない事です。無理もありません」

そう言ってシェルを労わる言葉をかけた後、マナはにっこりと微笑んだ。

「シェル様。既にユラに頼んで、街の整備に関して手配してもらっています」

「えっ・・・?」

唐突なマナのその言葉にシェルは目を丸くした。

「まずは道などの交通面を回復しなければなりません。道、それに建物なども、屋根から雪が落ちて来ると危ない事がありますから、早々に雪を除雪しなければ。その手配は既に終わっています」

再度シェルに解りやすく、内容をきちんとマナは伝える。

「それから雪で壊れた建物や、怪我をした人々への援助金の手配を行ってください。これは言ってみれば災害の一種ですから。国が僅かでも援助するのは当然です」

次から次へと今回の対策をすらすらと言ってのける。

さすが元アイリシア女王というべきか、こう言ったことへの対処の仕方は手慣れているようだ。

餅は餅屋と言ったところだろう。
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