コメント

□エレシュ編
3ページ/3ページ

帰ってきた瞬間思いっきり睨まれた。

主にエレシュの後ろにいたアダムが。

「アダム・・・よくも俺のレスを」

「お前が話を聞いてやらないからだろ」

予想通りの反応にアダムは溜息をつく。

「五月蠅い。レスは俺のなんだから当然の事だろう」

「少しは加減というものを覚えろ」

「お前だってリリスの事になると目の色変わるだろう」

「・・・お前みたいに、頻繁に追いかけたりしない」

「でも我慢できなくなって、強制的に連れ戻したり、無茶する事あるだろう」

「当然だ」

真顔で答えた。

今回助けられたとはいえ、エレシュはアダムをフォローする気にはなれなかった。

知る者は良く知っているが、ディエスはリリスが絡むと性格が変わる事がある。

この2人は根本的に似ているところがあるのではと思い溜息がもれた。

「あの・・・アダム様・・・」

「ああ。悪い」

しかしこのままでは本題が始められないと思ったエレシュは事情を知るアダムの名前を呼んで制止をかけた。

しかし事情をしらないディエスにとっては、エレシュがアダムの名前を呼んだ事が面白くない。

「レス・・・」

逃げていた事と合わせてディエスがすごく怒っているのが良く解り、エレシュは思わず1歩退いた。

しかしここでひるんでいては肝心な事が何時までも進まないとまた1歩踏み出す。

「俺は邪魔になると思うからもう帰るぞ」

「覚えていろよ」

待て、とは言わない。

確かにディエスにとって邪魔な事に変わりはないのだ。

ただし報復はするつもりらしい。

相手が相手なだけに不可能だという事実はディエスには関係ない。

「アダム様。ありがとうございました」

「ああ。気にいられるといいな」

アダムからそう言われた瞬間、エレシュは何故か顔を赤くし、その場か消えた彼を見送った。

それが気に障ったのかディエスの機嫌はますます急降下した。

「レス・・・どういう・・・」

「これです」

そう言ってエレシュが突然ディエスにつきだしたのは紙の束。

それはエレシュが逃亡中にもずっと持っていた例のモノだ。

ただし、その様子はその頃とは少し変わっている。

「これ・・・」

「陛下に聞かせたい新しい曲ができましたので。・・・・・今、歌っても良いですか」

エレシュは本当にごくたまに、ごくたまにまったくの新しい曲を突然思いつく。

そしてそれが完全に出来上がるまでは誰にも内容は一切教えずに仕上げるのだ。

勿論ディエスにも。

何故ならディエスに聞かせるため、ディエスの為に作っていると言っても過言ではないから、未完成のモノをディエスに聞かせることも、楽譜を見せる事も良しとしておらず、完成まではなんとしても隠し通そうとするのだ。

それを漸く理解したディエスは下がった機嫌を一気に回復させた。

見る見るうちに口の端が弧を描いていく。

「すぐに聞かせろ」

「はい」

ディエスの言葉に嬉しそうに微笑むとエレシュは久しぶりのディエスの為の新曲を歌い出した。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ