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□アキ編
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それは次の日の朝食の仕込みをしている時に訪れた。

「はっ?今何て言った?」

この場にとてもそぐわないというか、似合わない人物が何故かやってきた。

そしてその人物が口にした言葉にアキは耳を疑った。

ちなみに周りにいたこの仕事での同僚達は皆、まるで蜘蛛の子を散らすかのようにいなくなってしまった。

逃げたのだ。

その原因となった目の前の人物を見て、最早呆れを通り越してさすがだと思ってしまう。

しかし当の原因はそんな事は気にしていないようだ。

寧ろ何故かこの状況に喜んでいるようなのは気のせいだろうか。

「ですから。例のチョコレート専門店のオーナーがアキくんに新作レシピを考えて欲しいと」

「いや。だからその意味が解らない」

何故見ず知らずの自分のところにそんな話がいきなり来るのかも。

しかも何故そんな話をレイが持ってくるのかも。

「・・・あのお店のオーナーがキリウス将軍の御友人と言うのはお話しましたよね?」

「ああ。聞いたな」

確かにそんな話を聞いた。

そのコネを使ってすぐに売り切れる商品を手に入れているという話も。

「キリウス将軍がこの間お会いになられて。それでアキくんの話をされたらしいですよ」

「はっ?俺の?」

ますます意味が解らない。

キリウスは同じ城の中にいるため時々会う事はあるがそれほど接点がある相手ではない。

勿論話題に上げられるようなエピソードなどなにもないはずなのだが。

「アキくんの作られる料理がとても美味しいという話をされたらしいですよ」

「・・・何故?」

やはりそう思ってしまう。

確かに軍部への食事もアキが作っているため、キリウスが何度も口にしていても不思議ではない。

それほど接点のな相手が料理が上手いという話を何故するのか良く解らない。

「まあ、相手の方も料理人と言えば料理人ですから。興味があるのではと思われたのでは?」

レイのその推測に成程とアキは漸く納得した。

しかしだとするとなんとなくだが話の流れが見えて来たような気がする。

「ようするにだ。その話で俺に興味持ったオーナーがその場の思いつきで俺に依頼してきたと?」

「そんな所ではないですか」

アキの推測にレイも同意する。

アキは溜息をついた。

レイの予想はかなりの確率で当たる。

そのレイも同意するなら本当にそうなのだろう。

一体あの店のオーナーとやらはどんな人物なのか少しだけ気になった。
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