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□クロウ編
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「いや。儂はゆるさん!一体どの面下げてこの家の敷居をまたいでおるのだ!!」
「なんで自分の家に帰ってくるのにいちいち面気にしなけりゃならないんだよ!?」
目の前の騒がしい光景を見つめながらクロウは何時も何時もネスタートは今日も元気が有り余っているなと少し安心した。
もう高齢にも関わらずネスタートは現役に近いくらいに元気だ。
その事実にほっとする半面、その有り余っている元気で煽りをくらうバックスやキリウス達が哀れだなとも思う。
時々それは軍の方にも飛んでくるが、やはり気に入られているゆえかクロウは殆どくらった事はない。
その為。
「まあ、まあ。おっさんもネスタート様も落ち着いて」
何時もこういった場面で仲裁に入るのはクロウの役目なのだ。
「むっ。・・・仕方がない。クロウに免じて今回はこのくらいで勘弁してやるか」
そして高確率で効果がある。
「・・・けっ。恩着せがましく言いやがって」
「なんじゃと!?」
「おっさん!!」
余計な事を言ってむしかえすなと言うつもりで呼ぶと不機嫌そうに鼻を鳴らして奥に引っ込んで行った。
「・・・クロウ、キリウス。すまんが話はまた後でじゃ。あの馬鹿息子のせいで今は部屋で落ち着かんと。お前達にまであたってしまいそうじゃからな」
「は、はい・・・」
「我々ならお気になさらず。ゆっくりなさってください。お爺様」
2人の了承を得るとネスタートは文句を言いながら奥へと引っ込んでいった。
取り残された2人は深く溜息をついた。
「はぁ・・・今回もだと多少腹は括ってましたけど・・・」
「悪いね。クロウくん。せっかく来てもらったのに、いきなりあんな事になってしまって」
「いえ。気にしないでください」
「しかし・・・どうも。まあ、お爺様が何故しつこく叔父上が軍人にならなかったのを根に持っているのかは解るからなぁ」
バックスは実は3人の兄弟の中でも1番軍人としての能力が優秀だった。
その為、バックスがあのまま軍人になっていればと、ネスタートは今でも残念に思っているのだ。
アスクリオ家は実力主義だが家族仲もとても良い。
その為、例え弟であろうとも後継ぎになれる可能性はある。
そしてネスタートだけでなく、歳の離れた弟の才能に兄も期待していた為、自分が中継ぎをしてバックスが結婚したら譲り渡そうと思っていたのだ。
しかしそれもバックスの医者になりたいという言葉で全て崩れ去った。
結局、軍医になるという最大限の譲歩を妥協案を出したのだが、未だあの2人は完全に納得ができていないようだ。
「・・・元帥もあわよくば、おっさんを軍人にしようと虎視眈々と狙ってますしね」
「まあ、それは叔父上の捲いた種だし。自分で何とかしてもら」
「クロウにいちゃ〜〜ん!」
キリウスの話の途中で足音が聞こえて来たと思うとクロウの腹にずっしりと衝撃が来た。
「うっ・・てぇ。ティキ・・か」
腹に激突してきたのは今年7歳になるキリウスの息子のティクノスだった。
「久しぶり!ねぇ、ねぇ。遊んで!遊んでよ!」
非常に自分に懐いていて、来る度に遊んでくれとせがむ子供に苦笑が零れる。
彼が来た方向から遅れて彼の1つ下の妹と4歳下の弟もいて2人も兄同様だ。
「ティキ。クロウくんは今、ついたばかりなのだから。あまり無茶はいってはいけないよ」
「あっ!お父さん。いたの?」
ある程度予想はしていたとはいえ、息子の冷たい一言にキリウスはがっくりと肩を落とした。
その姿をクロウは複雑な心境を抱えながらも心底同情した。