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□クロウ編
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広々とした屋敷の中にはこれまた広々とした庭がある。

もしかしたら屋敷自体よりもこの庭の方が広いのではと思えるほど。

その庭にはたくさんの植物が存在し、大きな木も何本も存在する。

しかしこの広い庭は決して植物を栽培するためのものではない。

ましてや普通の貴族のような観賞用や己の財力を誇示するため、あるいは趣味の類のものでもない。

木々や植物は主に庭の周りに固まっていて、庭の中心からほぼ大部分は大きく人が動いても大丈夫なすっきりとした、そんな変な作りになっている。

何故ならこの庭で行うのは主に訓練だ。

軍人家系であるアスクリオ家にとって、その為の訓練こそが第一として考えられている。

ここはその為の庭なのだ。

そんな庭のあるアスクリオ邸に実に久しぶりの客が訪ねて来た。

「ただいまー」

「ただいま帰りました」

「お邪魔します」

呑気に手を上げる1人と頭を下げて挨拶をする2人。

「おおっ。クロウよく来たな。それにキリウスも良く戻った」

「お久しぶりです。ネスタート名誉顧問官」

厳格そうな白い髭を生やした老人に苦労は恭しく頭を下げた。

彼は元クレマテリス軍人なら誰もが知る先の元帥であり、軍を引退後も名誉顧問官の地位を与えられている人物である。

現場に出て来る事こそないが、彼は軍に対する口出しの権限を与えられていてその効力は大きい。

若いころからクレマテリス王国を護り続けて来た英雄であり、彼の現役時代を知る者は『鬼のネスタート』と呼ばれ、自他共に厳しく、そしてその名の通り、船上では鬼のような活躍を見せたという。

バックスの父にしてキリウスの祖父。

そしてキリウスのスパルタぶりは間違いなく祖父の血をひいているとクロウは確信している。

「ほれクロウ。そんな所に立っていないで。中に入ってゆっくりと茶でも飲め」

「はい」

だがクロウはネスタートに随分と気に入られていた。

ネスタートだけではない。

このアスクリオ家の人間全てにどうも好かれ気に入られてている。

その為かクロウに対してはネスタートの態度は随分と柔らかい方だ。

逆に。

「いや、親父。俺もいるんだけど」

唯一名前を呼ばれなかったバックスは顔を引き攣らせながら突っ込みを入れた。

するとネスタートはカッと瞳を見開いてバックスに杖をつきつけた。

「黙れ!この親不孝者が!!」

いきなりバックスを怒鳴り上げる。

その姿にクロウもキリウスですら、「また始まった」と思った。

「代々軍人を輩出するこのアスクリオ家の・・・それも儂の息子でありながら、医者になりたいなどと言いだしおって!」

「だーかーらー!もうその事は決着付いてるだろうが!」

いい加減しつこいとバックスはうんざりした様子だ。

しかしネスタートは違う。

軍医になるという条件をバックスは満たした。

しかしそれでも、もう随分と昔の話なのに納得がいっていないのだ。
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