残暑お見舞い

□暑い日の怖い話
3ページ/23ページ

さて、それは良い事として、今の問題は暑さで倒れた人間達の事だ。

おかげ様でここのところバックスの部屋である医務室は非常に繁盛しているとの事。

大量の水やら塩やら栄養剤やらが毎日何度も医務室に運びこまれているのが確認されている。

さすがにこの件ではあのキリウスもスパルタ指導をしようとは思わないらしい。

否、おそらく旧アイリシア出身者はさすがに多めに見ているだけで、もしこれが旧クレマテリス出身者、つまり以前からの部下であったのなら、回復後確実にスパルタコースだろう。

それが解っているからこそ、旧クレマテリス側からは誰も犠牲者は出ていないと言っても良い。

皆根性でスパルタへの道を回避しているのだ。

「・・・魔術でなんとかできないのか?」

「無理ですね。小範囲ならともかく、貴方方が訓練する場所全てを冷気魔術でどうにかしようとなると」

「だよなぁ〜」

そもそもレイは旧クレマテリス出身の為か、冷気だとか水の魔術があまり得意ではない。

とは言えってもそこは「黒霊の魔術師」。

得意ではないとはいっても世間一般のそれとは些かレベルが違う。

しかしだとしても長時間広範囲に渡ってどうにかするのは難しいと言ったところだろう。

「せいぜい小範囲二ヶ所程度なら安定してできるのですがね。もしもっとできるでしたらとっくにでやっています」

それでもそれだけできるのがまず凄い。

しかし小範囲二ヶ所ということは、確かにもう不可能という事だ。

加えて確かにレイは自分に対しても何もしていないのだろう。

ポーカーフェイスすぎるのも問題であると思う。

「・・・そういえば、姫さん。倒れたんだよな」

連絡だけは受けているが、まだ様子を見に行けていなかった。

大陸で一番北に位置し、最も寒い街で生まれ育ったマナ。

しかも水神の分身である事も影響しているのかもしれない。

誰よりも暑さに弱いのは仕方ないのか、早々に倒れて寝込んでしまった。

バックスの診察によれば湿度と気温を一定に保った場所で安静にし、栄養をとれば問題はないという事で、軽い熱中症のようだ。

軽いだけで済んだのは不幸中の幸いかもしれない。

しかしマナが倒れた時のシェル、そして三姉弟の狼狽ぶりは尋常ではなかったという。

シェルなどあのマナが誘拐された時と同じ速さでバックスの所にマナを抱えて言ったのだという。

診断結果が出る前も出た後もかなりの惨状だったという。

主にシェルと三姉弟の精神がだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ