献上品・宝物品
□休暇日和
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「はい。エレシュ様。僕頑張ってきます」
結界形成を得意とするゲーテは、その『回廊』の入り口封鎖を良く任される。
しかしはっきり言って『回廊』の入り口封鎖はかなりの大役である。
その為いつものことであるが、ゲーテはエレシュの言葉に緊張し、真剣な面持ちではっきりとその責任ある仕事を引き受けた。
そして一礼すると早速『回廊』入り口封鎖の作業に取り掛かるために部屋から出て行った。
「えーっと・・じゃあ、俺は・・」
ゲーテの後姿を見送った後、不意にシヴァがどうしようかと口を開きかけると、ちらりと視線をやった先で目の合った主君が微笑み、無言の圧力でもって「とっとと何処かへ行け」という腹黒い思いをぶつけてきた。
それを瞬時に読み取ったシヴァは一瞬固まった後、挙動不審気味に視線を彷徨わせながら口を開いた。
「あ、じゃあ・・他の連中にこのこと報せてくるから」
「ああ、頼む」
シヴァの言葉に頷きながら答えたエレシュだが、その視線は横でシヴァに向かって無言の圧力を飛ばしているディエスへとちらりと向けられ、それを見ながら彼は溜息をついた。
返答を受けて足早に部屋を出ていたシヴァを見送った後、エレシュは上機嫌で自分を手招きしている主君と向き合った。
「レス」
にっこりと微笑んでそう言われたエレシュは彼に近づき、目の前まで来たところで引き寄せられ、椅子に座っているディエスの膝の上に座らせられ、ぎゅっと抱きしめられた。
「ふふふっ。レス・・・」
「やけに機嫌が良いですね」
「だって今日の夜から明後日の朝までお前と2人きりだから嬉しくてな」
そう言いながらディエスはエレシュに口付けを落とす。
「んっ・・・」
「お前は嬉しくない?」
唇を放してちろりと下顎を舐め、既に熱の篭った瞳でエレシュを見つめながらそう告げる。
するとその瞳に見つめられたエレシュは、顔を真っ赤にして1度目線を外し、やがてこてんっと頭をディエスの胸に預けた。
「・・・嬉しい、ですよ」
小さい声だが確かにそう告げたエレシュに、ディエスは満足そうに笑むと再び口付けを落とした。