神授国騒動記
□10話
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城内は騒然としていた。
牢からラエンナとインデリタの姿が消えたのが発覚した時もそうであったが、今はその時以上だ。
牢から消えた2人は、数日後別々の場所で遺体として発見された。
ラエンナは人などよりつかない崖下で。
インデリタは同じく人が滅多に来ない森の中で。
ラエンナもインデリタも刺し傷と思われる外傷があり、明らかに誰かが手を下したのは明らかだった。
おそらく牢から2人を逃がした人物と、殺害した人物は同一犯。
しかも2人がまったく別々の場所で殺害されていた事を考えると、少なくとも2人以上の反抗である可能性があった。
解らないのは何故2人を殺すのにわざわざ牢から連れ出すという手間を取ったのか。
またどうやって見張りの目を盗んで2人を連れ出す事が出来たのか。
そして1部の者達にはそれよりも問題視する事実があった。
ラエンナの死亡していた場所。
それは先王の正妃が事故死した場所と同一であったからだ。
これは偶然なのか否なのか。
もし偶然でないのならば、先王の正妃の死も実は事故ではなく他殺だったのではないのかという疑いを持つ者もいた。
「ラエンナ妃とインデリタが殺害された・・・それもラエンナ妃は、婆様と同じ場所で、か」
その疑いはシェル達も持つにいたっていた。
それは当然のことと言っていいのかもしれない。
何故ならあまりにも出来すぎている。
そう思っているのはこの場にいる全員だ。
「絶対、宰相のクソジジイの仕業だ」
先程からそう言って顔を引き攣らせているのはバックスだ。
そこには彼の個人的な感情も十分入っているのだろうが、それだけでないことも解っている。
ラエンナとインデリタの件はそうとしか考えられないからだ。
ラエンナとインデリタがあのまま捕まった状態のまま尋問されて困るのは誰か。
それは彼女達と繋がりがあったとみて間違いないだろうウォルトゥスだ。
彼女達が余計な事を話せば一気にウォルトゥスにとっては不利な状況になる。
だからそうなる前に先手を打って殺害したのだろう。
そこまでは容易に予想できる事だ。
ラエンナとインデリタを殺害したのはウォルトゥスと彼に加担する人物。
だが、だからと言って先王の正妃の件まで彼の仕業だと考えるのは少々早計だと思われた。