神授国騒動記
□9話
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よく晴れ、気持ち良い日差しが降り、心地の良い風が吹く、その日。
窓辺に置かれていたそれを見つけたのはルリだった。
それを見つけた途端ルリは訝しげな表情をした。
ここは王太子であるシェルの部屋で、マナも生活を共にしている部屋だ。
それゆえにマナ付きの女官と言う事になっているルリが現在この部屋の掃除等も請け負っていた。
勿論それは表向きの理由であり、本当の理由はマナの護衛だ。
例え部屋にいたとしても誰かと一緒にいる。
それがマナに対して取り決められている事だった。
だがそれが先日の宰相との接触で1度破られたのだ。
ルリのマナ付きの女官という表向きの立場は、マナの傍に長く留まり、行動を共にするのに非常に都合が良い。
そのため部屋の主ではあるが、昼間は執務に忙しいシェルよりもマナと一緒にいる時間は長いのかもしれない。
ましてや理由を作って仕事の合間に抜け出してこなければならないユラやアキよりも。
だからこそ1度失敗してるからといって、マナの事を任せるのにルリを外すわけにはいかないのだ。
変わらずマナの護衛を主立って任せられいるルリにとっては部屋の掃除、女官の仕事こそがついでだ。
だが手抜きなどする事はない。
例えそれが任務の為の仮の仕事とはいえきちんと完璧にこなせと教えられているルリが手抜きなどするはずがない。
ましてや今現在ここはマナの生活空間であるのだから余計にだ。
だから見落としなどあるはずがなかった。
だが最後に入念なチェックを行うのは当然のこと。
そして最中にそれを見つけた。
先程掃除したはずの窓辺で。
しかしその時は確かに存在しなかったはずのモノをである。
それは綺麗に包装された箱だった。
シンプルであるが実に趣味がよく、飾りとして1輪の花とカードが添えられていた。
そしてそのカードの内容を見た瞬間ルリはぎょっと眼を見開いた。
そしてカードから視線を移し、暫しその箱を眉を寄せて見つめていたルリは、その後包装を開かないままの状態で箱を確認する。
このままの状態で見ただけでは危険なものである様子はない。
しかし中身を開けば違うかもしれない。
だからといってルリにはこの箱の包装を解くことも、箱そのものを開いて中身を確認する権利も今は持ち合わせていない。
暫し悩み、考えた末に、溜息をつき、やや不本意ながらも、ルリはその箱の扱いについて確認すべく、カードが受け取り手と名指ししている主君の下へと向った。