神授国騒動記


□6話
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謎の仮面の襲撃事件から翌日。

王太子の私室であるそこを占拠しているのは部屋の主であるシェル、ではなく・・・

「はい。アキくん。口開けてください」

「・・・・・・」

昨日から引き続き怪我の治療は完全に終えたものの、術後の安静を言い渡されて(不本意ながらも)ベッドで寝ているアキ。

そして満面の笑みを浮かべて楽しそうに彼の世話を焼いているレイ。

アキは正直この状況に顔を引き攣らせて目の前の人物にあきれ果てていた。

「あのな・・・それくらい自分で食べれる」

自分に向けられたスプーン、に盛られた食事を見ながらそう告げる。

正直撃たれたのは背中で手や腕はまったくの無傷。

食事くらい人に世話をしてもらわなくても十分に自分でできる。

そもそもアキ自身は今すぐ「水面の月」の任務に復帰したいくらいなのだ。

それをマナが心配する(9割がこれ)などの理由から未だ大人しくベッドの中にいるのだ。

なのでまるで重病人のように食事の世話までされるというこの状況はかなり不本意である。

しかも相手はあのレイ。

アキには下心があるようにしか思えなかった。

否、確実にあるのだろう。

だからはっきりと断ったのだが。

「私がしたいから良いのですよ」

そう言って自分勝手な理由を掲げて引き下がろうとしないレイにアキのそう長くない堪忍袋の緒が切れた。

「いー加減にしろよ!お前は!治療はもう完璧だし、大丈夫だって言ってるんだからそれくらい自分で食える!大体お前、仕事はどうしたんだ!?仕事していい奴はさっさと仕事しろ!任務に早く戻りたい俺に対する挑戦かーーー!」

言いたい事を一気に言った為ぜーぜーと激しく肩で息をする。

仮にも怪我人がこんな声を出していいのかと思うが、アキ自身の言うとおり治療は完璧なので別段傷口が開く心配はないので問題はないのだろう。

息を必死に整えて少し落ち着いてきたところでキッとレイを睨みつける。

しかし目の前のレイはアキの文句など全く気にしていないようににっこりと微笑んでいた。

「心配いりません。後ですぐに片付けられますから」

「だーかーらー」

「そんなことよりも。私はアキくんのお世話をしたいんです」

「そんなことって・・・」

どこまでも自分中心なんだと怒りを通り越してあきれ返りアキはその場で脱力した。

「お前・・どこまでも自分勝手だな・・・」

「そうですか?」

「そうだよ」

「まったくだ・・・・・」

それまで2人で話していたところに突然割って入ってきた第3者の声に2人は同時にその声のした部屋の扉へと視線を向けた。
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