神授国騒動記


□5話
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雨雲の濃いその日。

彼らはついに邂逅を果たしてしまった。

一部緊張感の漂うその部屋で、内心はどうかは解らないが、少なくとも表面上は笑顔を浮かべている2人の人物がいた。

「初めまして。ソロハレイズ=ケルビシェイと申します。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

「いいえ、こちらこそ。私はユラシル=ヘスペリスです。かねてより御高名拝聴しておりますわ。黒霊の魔術師殿」

互いに自己紹介をした後、少しの間2人は何も喋らずに黙っていた。

しかしすぐに何故かしっかりと握手を交わしていた。

まるで何か通じ合ったものがあるように。

それを見た瞬間、シェルとクロウは顔を引き攣らせ、ルリは視線を泳がせ、マナは純粋に2人が仲良くなったと嬉しそうだった。

「し、シェル・・・やばくないか。あれ」

出会った時クロウへの態度が多少おかしかったユラだが、それ以降はいたって他の面々に対するのと同じ態度だった。

だからクロウもユラの性格が今では良く解っている。

だからこそレイとユラのこのやり取りに危機感を感じているのだ。

それは隣に居たシェルも同じだ。

「ああ、クロウ。史上最凶のタッグが今結成された気が、する・・」

冷汗まで薄っすらと流してしまったシェルの横でぼそりとルリが一言零した。

「私、知らない・・・」

それをしっかりと聞き取っていたシェルとクロウは内心「無責任なこと言うな!」と盛大に抗議の声を上げていた。

「ユラってば、早速レイ殿と仲良くなったんだね。良かった」

唯一ユラ相手には抑止力になってくれるはずのマナはこれであるから何も期待はできない。

嫌な予感はやはり的中するものだとシェルとクロウは2人揃って溜息を零した。

「・・というか、レイ。お前本当に久しぶりに顔見るな」

そう不意に疲れたように声をかけたシェルにレイは事も無げに返事を返した。

「そうですね」

「いや・・そうですねって」

「ここ最近は仕事をしてすぐに邸に帰っていましたので。お顔を見せる暇がありませんでしたから」

「あの・・まだお母様の具合が悪いのですか?」

以前聞いた話を思い出して、マナは心配そうにレイに尋ねる。

「いいえ。それほど大したことはありませんよ。ご心配なく」

そうにっこり笑ってレイが返すとマナは少し安心したような表情を見せた。
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