神授国騒動記
□1話
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人の声が耳に入ってきた気がしてマナは重々しい目を開けた。
覚醒してすぐには解らなかったが、仰向けになって寝ている自分の目にまず飛び込んできたのが天幕の上部だということをようやく理解した。
次いで自分は簡素なベッドに寝かされており、何故かドレスから簡単な寝着も着替えさせられているという事も解った。
そうして自分のこの身体も見られたかなどと考えていると、やはり聞こえてきた人の声に耳を傾けた。
「おい、おい。それは本当か?」
「ああ、派手なもんだったぜ。こっちだって不思議なくらいだ」
「・・だがどんな奴らでもやはり死んだと解ると心が痛むな」
「お前が同情する事ないだろ。連中もある意味自業自得だ」
「おっさん・・幾らなんでもそれはないだろ」
「戦争なんてそんなもんだ。どうあれこっちが仕掛けたのは事実だし。被害者は寧ろここの民衆だろう」
「だから、あいつらにはきづかれないよう、ここの民達は確保してたルートで別の街に逃がすようにしたんだろ」
その言葉を聞いた瞬間マナは目を見張った。
彼は今なんといったのか信じられなかった。
なんとなくではあるがここが攻め込んできたクレマテリス軍の天幕である事は解った。
そこで話している彼らがクレマテリスの軍関係者である事も。
にもかかわらず女王以前にアイリシア人である自分がこうして拘束されもせず無事でいられることもかなり不思議だが。
それ以上に攻め込んだ先の民を気遣うような、ましてや逃がすなどということをしたという会話をしている彼らの真意がマナには全く解らなかった。
だがそんなことよりもマナは自国の民が無事に逃げられたという事実を確かなものだとどうしても確信したかった。
この話が本当なら少なくとも街の多くの民は無事でいてくれる、そう考えたマナはいてもたってもいれず、他の事など全く考える余裕もなく声を上げていた。
「そのお話は本当ですか?」