葬送歌人


□8:贈り物注意
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エレシュが執務室に残してきたディエスがきちんと仕事をしているか(多分確実にしていないだろうが)気にしながらシヴァとゲーテと一緒に帰ってくると、そこにはディエスと話し込む金髪碧眼の実に美しい顔立ちの男性が1人いた。

その姿に思わず呆然と立ち尽くしたゲーテに対し、エレシュとシヴァは見覚えがあった為その人物の名を少し驚いた口調で口にした。

「アダム様!?」

呼ばれたその人物はこちらを振り返り、3人の顔を1人1人確認していく。

「ああ、久しぶりだな。エレシュにシヴァ・・だったか。そっちは初めて見る顔だが・・・」

その声にはっとして我に返ったゲーテは反射的にぺこりと頭を下げて挨拶をする。

「あ、初めまして。ゲーテと申します」

「なるほど・・お前が」

何か納得したようにそれだけ言って見せたその人物、アダムにゲーテは当然のことながら首を傾げる。

その横で1歩前に進み出たエレシュが未だ驚いたような口調でアダムに問いかける。

「アダム様。どうしてこちらへ?あの方とは違ってめったに他世界にはお出になられないはずでは・・・」

エレシュの「あの方」というのが誰か解ってしまってシヴァは苦笑を浮かべた。

そしてそれはアダムにも通じたようで、彼はただこくりと頷いて答える。

「ディエスにちょっと用があったのでな」

「陛下に・・?」

アダムの言葉にエレシュが眉を潜めてディエスの方を見てみれば、何やらやけに上機嫌な彼と目が合った。

その時、一瞬エレシュは嫌な予感に襲われたが、とりあえず今はそれを置いておく事にそした。

この時その嫌な予感についてよく突き止めていればと、彼は後で大いに後悔することになるのだが、それはまた後で明かされる事である。

とりあえず、今はアダムがここに来た詳しい理由を聞かなくてはとエレシュは更に彼に尋ねる。

「用とはなんですか?」

「・・・少々礼をしに」

アダムのその言葉にエレシュは目を大きく見開き、不可解なモノを見るような目でディエスとアダムの2人に交互に視線を送った。

「アダム様が、陛下にですか・・・?」

「・・なんでレスはそんな意外そうに言うんだ?」

「貴方の日頃の行いを振り返ってみた下さい」

何やらエレシュの言葉に不服があったのか、先程までの上機嫌を一変させて頬を膨らませたディエスにエレシュはきっぱりときって捨てて見せた。
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