葬送歌人
□6:旅は道連れ(中編)
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モンスターに懸賞金のかけられているその世界はさして生活するのがエレシュ達にとってはそれほど難しい世界ではなかった。
1度その仕組みがわかってしまえば、後はモンスターを倒してお金を稼げばいいのだ。
普通の何もない世界よりは放り出された世界としてはある意味ましだった。
まず生活資金に困らないですむのだ。
しかしそれというこれもこのメンバーのおかげかもしれない。
シヴァはもともと近衛隊士長であるから戦闘ができるのは当然なのだが、驚くべきは仲間になったアイスとブリックの2人である。
はっきり言ってこの2人はシヴァよりもよほど強い。
しかもまだまだどうも実力は見せきっていないようで、それはブリックよりもアイスのほうがより大きいようだ。
確かに彼は不意打ちで背後からとはいえ、エレシュを助ける時モンスターを一刀両断して見せたのだ。
強いのは当然であるがここまでとはとエレシュが驚くほどに彼はずっと披露してくれていた。
そしてその当のエレシュはというと、戦闘ではほとんど役にたたないため、情報収集や金銭管理などの裏方に徹するしかなかった。
「モンスター討伐時には完全に足手まといだな・・・」
溜息をついてぽつりとそう零したエレシュは、モンスター討伐関係の施設で換金ををおえ、次に狙いやすそうなターゲットとなるモンスターと、例の黒髪黒目女の情報収集を行っていた。
アイスは「こんなところに情報を残す奴ではない」と言っていたが、こういう場所には比較的情報が集まるものなので、念のために聞き込みを行っていたのだ。
実際大概の相手はエレシュの外見にころっと気を良くして、知りたい情報から別に尋ねていもいない情報までぺらぺらとよく話してくれた。
しかし中にはその外見ゆえに妙なちょっかいをかけてくる者もいた。
「姉ちゃん。随分と美人さんじゃないか」
そう言ってきたこの男も例に漏れずのようで、ニヤニヤと笑いながらエレシュに近づいてきていた。
すると周りにも仲間なのか数人の男たちがエレシュを囲むように陣取っていた。
「俺は女じゃない」
きっぱりとそう告げてみれば男の1人が口笛を吹くのが聞こえた。