葬送歌人


□3:朝の話
1ページ/11ページ

睫を震わせながら瞼を上げたエレシュは起きたばかりの上、何よりも疲れで気だるいために未だ焦点のあっていない薄紅色の瞳を暫くただ目の前に向けているだけだった。

そして徐々にはっきりとしてきた視界に最初に捉えたものにエレシュは一瞬ぎょっとした。

鼻と鼻が触れ合いそうなほど近くにディエスの顔があった。

何時も同じベッドで寝ているし、行為の後は必ず抱き込まれて眠るので当然といえば当然なのだが、昨晩行為が思い出されてエレシュは顔を一気に真っ赤に染めた。

いつものことでわかりきっているはずなのに、どうもこの瞬間は決してなれずとても恥ずかしく思えてならない。

おそらく冷静な頭で行為の事が走馬灯のように駆け巡るからなのだろうが、している最中や前よりも後のほうがよほど恥ずかしい気がする。

そんな事を考えながら未だ目を閉じて寝入っているディエスから身体を僅かにでも離そうと身じろぎした。

「ふあっ・・・!」

しかしその瞬間いきなり感じた自分の身体の下部への違和感に大きく目を見開き甘い声を上げていた。

「こ、の・・人は・・・」

それを悟ってエレシュはあれだけ喘がされ続けたにもかかわらず、全くかれていない何時もどおりの綺麗な声でぼそりと呟いた。

その表情は僅かにだが引き攣っている。

次第に顔を紅潮させていきながらもなんとかこの状況をどうにかしようと、無理やりにでも離れようと片手をベッドについて力を入れようとしたその時だった。

「んっ、ああっ・・・!」

いきなり頭と腰を力強く引き寄せられてエレシュは身体の下部に走った強く甘い痺れに嬌声を上げた。

その声を上げてすぐさま落ち着くように呼吸を整えていると、自分の髪を梳く感触と共に上機嫌な声が降ってきた。

「寝起きに好い鳴き声なんて最高だな」

まるで酔ったようなその声が聞こえてきてすぐにエレシュは音を立てて耳を舐められたうえ甘噛みされた。

その感触にエレシュはびくっと身体を震わせ小さく喘ぎ声を漏らすと楽しげな笑い声が聞こえてきた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ