番外編

□白の憂鬱
1ページ/65ページ

この城の連中は相当暇なのか。

アキはもう何度目になるか解らない同じ事を思った。

アキが怪我を完治させ、速やかに表向き城の厨房勤めとして働き出した翌日からだ。

石等の硬いものが何処からか飛んでくる。

1度刃物だった事もある。

何か罠のようなものがしかけられている。

あまりにもばればれで興ざめした。

上から何か物が落下してくる。

サボテンはわざわざ取り寄せたのだろうか。

などなどなど。

そんな事が彼には起きていた。

どう考えても嫌がらせだ。

1部嫌がらせではすまないようなものもあるが。

しかし「水面の月」の指揮官補佐であるアキにとってこれらの嫌がらせなど痛くもかゆくもない。

子供の遊び以下。

赤子の手を捻るよりも防ぐのはたやす。

幼少期の地獄のような特訓に比べればこんなもの可愛いものである。

もっとも日毎に回数が増していっている為、かなり鬱陶しくなってきているのは事実である。

それ以上に、回数が増えれば何時自分の主君に気づかれるかも解らない。

あの優しい主君の事だからきっと我が事のように心配してくれるだろう。

アキにとってこれが心配されるようなレベルのものではないにしてもだ。

こんな事でマナに、ましてや自分などの事で余計な心労はかけたくないと思っているアキだ。

嫌がらせ事態は大したことはないのだが、このままでいるわけにはいかないと思っている。

そもそも何故自分が嫌がらせを受けているのか、アキは早々に気がついていた。

それはとても解りやすいものだった。

だが同時にかなり不快になるものでもあった。

色々な意味で。

不快になっていること事態が不快であると言っても良かった。

そして世の理不尽さに腹が立ちもしていた。

大した嫌がらせではないとはいえ、何故自分が嫌がらせを受けなければならないのか。

理由は解っているが、その理由に納得がいかないのだ。

自分は悪くないのに。

悪いのは全てあの男であるはずなのに。

自分は関係ない。

寧ろ被害者と言っても良いはずなのに。

何故、あの男の、元恋人「達」に、自分が嫌がらせをされなければならないのかと。

改めてそう思い、更に腹が立ってきたアキは八つ当たりのように思いっきり鋭い刃を振り下ろした。

ざっくりと頭が切り離される。

今日の夕食は、魚料理のようだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ