献上品・宝物品

□休暇日和
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その日、魂陵界にとある珍しい「奇跡」が数年ぶりに起った。


「・・・明日は休暇にしましょう」

「うん?・・・えっ?えーーーー!?」

片付いたその日分の書類を手にとって見ながらエレシュが言ったその一言に、仕事の疲れを癒すように彼に抱きついていたディエスがその意外な言葉に驚き目を見開いて声を上げた。

そしてエレシュの言葉に驚いたのはディエスだけでなく、その場にいたシヴァもゲーテも驚いて動きをぴたりと止めていた。

「きゅ、休暇?休み!?本当か?!レス」

「・・・その前にいい加減離れてください」

今の言葉を何かの冗談にするわけにはいかないという剣幕で確約を取ろうとするディエスに対し、エレシュはがんっと肘を己の主君に向けて振り下ろして無理やり抱きつくのを止めさせた。

「いったー!レスぅ!」

「何時までも抱きついてる貴方が悪いんでしょーが!他にシヴァやゲーテの目だってあるのに・・・」

「じゃあ・・俺達が見てなきゃいいのか・・・」

抱きつかれていた時は平静そうにしていたが、どうやら必死に平常心をたもっていただけだということは、最後の方で小さく呟いた言葉と共に頬を僅かに朱に染めた事で解った。

そしてエレシュの発したその最後の呟きに対してシヴァがツッコミをいれると、それをまるで肯定するようにエレシュがキッと頬を赤くさせたままで彼を睨みつけていた。

その視線に射抜かれてシヴァが苦笑を漏らすのを見た後、エレシュは彼から視線を外してこほんっと咳払いをして先程のディエスの質問に対して答えた。

「・・本当です。最近は比較的仕事の進みも良いし、合わせて魂塊の入りも比較的少ないようですし・・・明日は数年ぶり、めったにない休暇です」

「今・・・『めったに』の部分を強調したな」

エレシュの言葉にそんなツッコミをいれてシヴァは遠い目をした。

実際、ディエスが普段からきちんと仕事をこなせばもっと休暇の数は増えるはずである。

しかし元凶である当のディエスはというと、最早頭は明日の休暇へといっているらしく、何を考えてりるのか1人でニヤニヤしていたりする。

その考えがなんとなくわかってしまうエレシュは半目でそれを見た後、諦めたように溜息をついていた。

「・・・ゲーテ。『回廊』入り口に結界を頼めるか?」

明日1日休暇となるという事は、『回廊』は完全に放置状態である。

魂塊は『回廊』から出るにはディエスが承認した書類が下りて初めて出ることができるが、入る分には自由に入る事ができる。

ただし魂塊は入り口で死神が魂塊をそれぞれ監査、選別する必要がある。

そうしなければどの魂塊が監査、選別が行われているか、いないか、またどういう魂か後々解らなくなってしまう。

なので『回廊』を放置する際には『泉』から『回廊』に魂塊が入らないようにしなければならないのだ。
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