葬送歌人
□4:女難の相
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今も不機嫌を全身で露にしているエレシュだったが、じっとディエスを睨みつけているだけで何故口を開くことはなかった。
ただただディエスを睨みつけているのみ。
そんなエレシュの様子に当然の如く気づいているのだろうディエスは、1度彼の方に目線を向けた後、シヴァとゲーテの方にしっしっと手を振って見せた。
どう考えてもその動作は「早く出て行け」というようなものだった。
それを悟ったシヴァは溜息をつくと主君の命令でもあるし、エレシュが何も話そうとしないのは自分たちがいるせいでもあるのだろうと思い、ゲーテの手をとって出口である扉の方へと向かおうとする。
「し、し、シヴァ様ぁ!?」
突然シヴァに手をとられ、恥ずかしさやら、嬉しさやら、驚きやらでゲーテは顔を赤くさせながら慌てて上擦った声で彼の名前を呼んだ。
そのゲーテの手を握ったままシヴァはまた溜息をついて端的に述べた。
「行くぞ。ゲーテ」
「え、え・・・でも・・・」
「良いから・・・早く行った方が身のためだ」
そう言いながら未だ戸惑うゲーテを一瞥した後、シヴァはディエスに向かって頭を下げ、ゲーテの手を引いて部屋を退室した。
「ふぅ〜〜・・・」
「あのー・・シヴァ様・・・」
部屋を出て閉まった扉の前でシヴァは長い溜息をついた。
その様子を見ながら未だ赤い顔でおろおろしながらゲーテは遠慮がちに声をかける。
「陛下はどうなさったのでしょうか?それにエレシュ様は不機嫌なご様子でしたし・・・」
「ああ・・それはだな・・・」
エレシュが女の姿になっているのはあの髪の長さ、コートに下で膨れ上がっている胸を見て理解しているのだろうが、不機嫌なその様子はやはり心配なのだろう。
そう言って瞳をうるうるさせ始めた目の前の少年の姿の死神は何故か如混ではない。
結構似合いそうな気もするがとシヴァはなんとなくそんな事を考えていると、突然頭上から何かが降ってきて、それに埋もれてしまった。
「うわぁああーー!シヴァ様?!」