神授国騒動記


□序章
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その言葉にマナは呆然とするように驚いた。

「クレマテリス軍が・・・何故?」

「解りません。ですが、あの紋章は間違いなくクレマテリスのものです」

唯一無二の主君からの問いかけに、首を横に振りながら先程とは違い敬語で答えた。

「・・・ここはクレマテリスとの国境付近にある街です。彼らがこの国を侵略しようとするなら、落としにかかるのも無理はないでしょうが・・・」

冷静に分析するその声にマナは慌てて声を遮った。

「そんなことは・・・クレマテリスの現国王・デュカリオン陛下は民を思いやり無闇な争いを嫌う賢王と名高いお方。侵略など考えるとは思えない・・・」

「確かに。ですが彼らがここに攻め入ってきた事実に変わりありません。ましてやクレマテリスは四国一の軍事力を持つ国・・・厄介ですね」

「そんな・・・」

その言葉に愕然となったマナには激しい不安に襲われた。

それは寧ろ自身がどうにかなってしまう事よりも、この争いの最中にいる民達や、今自分の目の前にいる者達の身の危険であった。

それを悟ったのか慌てたような声で意外な言葉が告げられた。

「大丈夫です!今のところ民にも地方配備の衛兵にも殆ど犠牲者はでていません」

「えっ・・・?」

「どういうこと?」

侵略してきているのであれば到底考えられないようなその事実の報告に、マナは少し気を緩めたように声をあげ、もう一方からは怪訝そうな声が聞こえてきた。

「それが・・・どうもクレマテリスの兵で本気でかかってきてるのは一部で、後の大半は手加減したり、その一部の過激な連中をわざと邪魔するような行動をして被害を少なくするよう務めているようなんです」

「なにそれ?それで一体なんの特があるっていうの?」

「知らないよ。連中の考えまで解るわけないだろ」

報告をする少年と同じ顔をした少女は少し呆れたように疑問を口にし、それに対して少年は片眉を吊り上げながら返事を返した。
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