大切なもの。第一章
□こんなことなら…
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俺はどうすればいいかわからなかった。
やっと悠のことを少しだけ知れた気がしたのに、俺の傷はもう間も無く癒えて、別れの時が訪れる。
悠は何も言わない。
いや、言わないんじゃなくて言えないんだろうな。
わかっていた筈だった。
少しでも仲良くなれば別れが辛くなることくらい。
でも、別れが来ることすら忘れてしまうくらい悠との時間は楽しかった。
蛙は単純な生き物だ。
いつか悠の事を俺は忘れてしまう時が来るんじゃないかと怖くなる。
悠と過ごして、心がどんなに暖かくなったか。
ただ過ぎていく毎日に悠が加わっただけでどんなに輝いたか。
別れるくらいなら俺はこんな感情知りたくなんかなかった。
別れたくない、そう言いたいのに悠に伝えることが出来ない。
いつだって俺は言葉の壁でなんにも出来ないんだと思い知らされて、俺はただ黙っているしかなかった。
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