大切なもの。第一章
□その目の意味を
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キラキラと水面が輝いて、夏へと近づいていく五月。
陽の光に照らされて少し温まった田んぼをスイスイと泳ぐ。
泥にはまらないように気をつけてね、と話しかけられてそれにゲコッと返事をして。
気分はきゃっきゃと話しながら楽しく過ごしていた。
そんな最中に、村人達の話し声が聞こえた。
村人A「やぁねぇ…あの子、最近は変な事言わなくなったと思ったら今度は蛙に話しかけ始めて…」
村人B「やっぱり呪われた子なんだろう?」
村人A「さっさとどっか行ってくれないかしらねぇ」
村人C「子供達もあんまり近づけたくないわぁ」
『っ……』
途端に手を止めて辛そうに目を細める悠。
なぁ、何でそんな顔をするんだ…?
「ゲコッ…?」
どうしたのか聞きたくて鳴くと悠はハッとしたように表情を元に戻して俺に笑いかける。
違うんだ、その顔が見たいんじゃないんだ。
言葉が通じないのがもどかしい、
こんなとき、悠と言葉が通じたらもしかしたらその悲しそうな目の理由を教えてくれるのかな…
でも所詮蛙だから俺は単純だ。
『早く終わらせて桜の木に毛虫を探しに行こう?』
その言葉を聞いた次の瞬間、俺の頭の中には食べ物しかなくなっていた。
あまりの単純さに自分で自分が嫌になりそうになるのは、もう少しあとの話だ。
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