大切なもの。第一章
□放っておけなかった
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人の子に捕まった。
もうダメだと、どうせボロボロになるまで遊ばれて捨てられるのだと覚悟した。
そのときだった。
朦朧とし始めた意識の中で、ふっと聞こえた。
透き通るような、凛とした綺麗な声で。
『なんて酷いことを!!』
その声の主は俺を抱き上げて、人の子たちを叱った。
人の子はいなくなり、俺はもうただ逃げたい一心で暴れた。
けれどその声の主はきつく握り締めることもなく、ただ水で洗ってくれて。
大丈夫そうだ、と力を抜いて。
目の周りも綺麗に拭かれて、そっと目を開き、そこでやっと声の主が見えた。
『なんて綺麗な蛙……。』
ふにゃりと目を細めて、優しそうに笑う。
人間は俺の模様をみて気持ちが悪いと言うけれど、この子は綺麗と言った。
『おまえは綺麗だね、真っ直ぐで綺麗な目をしてる。私の心まで安らぎそうな程純粋な目をしてる。
……傷がひどいから、このまま少しの間だけお世話をさせてくれない?静かに休めるようにするから…』
笑いながらも、目の奥はどこか縋るような、悲しそうな色をしていて。
何かほっとけないような気がして気が付いたら返事をしていた。
嬉しそうにしながらもやっぱりその目の奥の悲しそうな色がチラチラ見えて。
いつかその悲しそうな目の理由を話してくれたらとか思っている自分がいて。
俺の次の瞬間を考えるだけの日々が、
あっという間に君でいっぱいになってしまった。
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