大切なもの。第一章
□近づく別れ
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8月に入った。
元々蛙は傷が癒えるまで共にいる約束だった。
傷が癒え、別れの時は間も無く近づいてきた。
悠は何も言わなかった。
蛙も、そっと静かに悠と過ごしていた。
悠は黙って日々を過ごしていた。
残り少ない日々を、どうすればいいのかわからずに、ただ時間だけが過ぎていく。
別れの言葉も、別れたくないとも言えずに…………。
わかっていた筈だったのに……
蛙は傷が癒えるまでしか一緒にいられない
そう言ったのは自分だったのに
本当の自分を見せられる唯一の存在になってしまった蛙との別れがこんなに辛いものに変えたのは自分。
私は…いっそ、最初からなかったことにして欲しいくらいに胸が締め付けられていた。
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