大切なもの。第一章
□晴れた日に…
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昨日と比べて一段と青く雲ひとつない空。
悠は肩に蛙を乗せて、吹く風に髪を靡かせながら川縁を歩く。
村のすぐそばを流れる川を少し登ったところだ。
悠は草むらに座り込んで、蛙を近くの石の上に乗せた。
『昨日…おまえも見てたでしょう?
人間であって、人間ではないもの。』
蛙は静かにゲコと返事をした。
『…………昨日の夜言った通り…、話すよ私の秘密。』
悠は少し震えながら言葉を紡ぐ。
『私ね、生き物でもないものが見えるの。突然見えるようになったわけじゃない…生まれてからずっと見えてた。
だから他の人が見えないことが理解できなくて、必死に伝えようとした。
でもそれは、見えない人からしたら不気味でしかなかった。
それがやっと理解できた時から、私は誰にも言わなくなったの。
だからやっと今のように普通の暮らしができてる、村の子供たちから罵声を浴びることもない。
けれど………昨日みたいに怖い思いをしたことは一度だけじゃなかった…。
それなのに、生きていくためにはそのことは誰にも言えない。
どんなに怖い思いをしても両親に泣きつくことすらできなかった。
どうしたのか聞かれたらとてもじゃないけど答えられなかったから…。』
悠は膝を折り曲げて、抱え込むように丸まった。
『誰かを信じて、そのことを教えたらいつだって虐げられてきた。
信じるのが怖い……生きていくことすら怖い…またアレに追いかけられるんじゃないかって怖くてたまらないの………。』
ぎゅっと力を入れて震えながら、どうやら悠は泣いているようだった。
蛙は石から降りて、悠にそっと寄り添った。
しかしすぐに悠は顔を上げて勢いよく顔を拭い、何もなかったかのように蛙に微笑んでそのまま草むらに仰向けに寝転んだ。
『ふふっ、なーんてね、こんなこと話しても何も変わらないのに。
…何も、変わってなどくれないのにね。今まで何するにも1人だったから、おまえが来て嬉しくて浮かれちゃってるかも』
顔は笑いながら、また悠は目の奥に悲しさを滲ませていた
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