大切なもの。第一章
□五月の村
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あのあと、少しづつ虫を捕まえられるようになり、それに比例するように蛙は元気になっていった。
もう蛙と出会った日から一週間が経つ。
傷は殆ど癒えて、今は悠の肩の上に乗って一日を過ごしている。
さながらジ/ブ/リのナウ○カ状態である。
五月の眩い光が差す田んぼに、悠は次々と苗を植えていく。
悠の方から降りて、蛙は水の張った田んぼをスイスイと泳ぐ。
『ふふっすっかり元気になったね、うっかり泥にはまらないように気をつけてね?』
「ゲコッ」
一人と一匹はきゃっきゃと楽しそうに苗を植えていくが、道を挟んだ隣の田んぼの村人はその様子を見てひそひそ話をする。
村人A「やぁねぇ…あの子、最近は変な事言わなくなったと思ったら今度は蛙に話しかけ始めて…」
村人B「やっぱり呪われた子なんだろう?」
村人A「さっさとどっか行ってくれないかしらねぇ」
村人C「子供達もあんまり近づけたくないわぁ」
『っ……』
ひそひそ話どころかどんどん耳に入ってくる声の大きさで喋る村人達の言葉は悠の心を確実に傷つけていた。
「ゲコッ…?」
蛙が悲痛そうな顔をした悠を心配するように鳴くと、悠はハッとしたように普段の笑顔に戻る。
『何でもないよ?さ、早く終わらせて桜の木に毛虫を探しに行こう?』
「ゲコッ!」
食べ物!と言わんばかりに元気に鳴く蛙が可愛くて、さぁ頑張ろう!と気合を入れる悠だった。
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