イベ短
□苦ク在レ貯古齢糖
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「こんにちは、大ガマ殿!」
「……んぅ……」
「お!お!が!ま!ど!の!!」
なんだか騒がしくて、俺は目を覚ました。
薄目を開けて見ると、愛しい俺の恋人、沙雪が少しむっとしながらこちらを見ていた。
「……んだよ、沙雪か……」
「んだよって何ですか!」
「まぁまぁ……ふぁあぁ…おはよ…」
「何言ってんですか、今はもう午後の6時ですよ?……そんなに呆けていては、ちょこれいとが渡せません……」
「ちょこれいと?」
なんで突然ちょこれいとなんて。意味が分からなくて聞き返す。
「今日は2月の14日ですが、新し物好きな貴方ならば知っていますよね?」
ちょこれいと、2月14日……
「ばれんたいん、か!」
「その通りです。勿論本命ですよ?」
そう言って沙雪は微笑み、俺にちょこれいとを渡した。そこにはメモ用紙が1枚挟まれていた……
沙雪は薄手の寝間着のみを着ていて、胸元には谷間が覗いていた。
「沙雪、こっち座れよ」
「…?ええ…」
沙雪が俺の隣に座った瞬間、肩を抱き寄せて首筋に吸い付く。
強めに吸えば紅い華が首筋に散ってより一層沙雪が美しく見えた。
「こんな時間に寝間着1枚で来て、誘ってるとしか思えないよなぁ?」
そう言って俺は更に沙雪の首筋に舌を這わす。
「、大ガマ殿ッ……」
「2人っきりの時は大ガマでいいって言ったろ?」
「んッ、ぁ、あの、」
「なに?」
「…すみません」
「……なんのことかわかんねぇなぁ」
「大ガマ殿!」
「沙雪」
「……なんですか」
「ちょこれいとはお預けだ。
先にお前を食ったって、構わねぇよな?」
「…」
「沙雪〜?」
「………………ちょこれいと、食べるんですか?」
「お前が俺に渡してきたんだろ?」
「……そうですけど」
「大丈夫だ。俺は本当にお前を愛してる。お前の為なら、俺は…」
「大ガマ殿ッ…」
〇〇は遂に泣き出してしまった。
「泣くなよ。最期くらい、笑ってくれよ」
「ッはい、」
沙雪は目に涙を浮かべながら笑った。
「そうだ、俺はその顔が見たかったんだ…」
俺は床に転がったちょこれいとを見つめて考えていた。
それはとある噂について。
名のある妖怪と相思相愛になり、なおかつその死体を食わねば治らない奇病があると。
ちょこれいとのメモ用紙には自分がその病気で、ちょこには毒が入っている、私は貴方を殺したくはない、といったことが書かれていた。
…俺が死んで沙雪が助かるなら…
俺は喜んでちょこを食べるさ、なんて。
ちょっとカッコつけすぎか?
でも本当にそう思ったんだ。
はっぴーばれんたいん。
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