大切なもの。第一章
□放っておけなかった
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その次の日、あの子が来たのは夕方だった。
泥まみれで、ミミズを二匹捕まえて。
俺は大人しくミミズを食べる。
ミミズっておいしい?と聞かれて頭を傾ける。
"おいしい"?それは何?
食べるのは生きる為、だからごめん、その言葉の意味がわからない。
ふと土で汚れた頬を見つめていたら、
どうやら見ている場所が分かったみたいで蛙相手に恥ずかしそうに慌てて着物で顔を擦って。
あぁ…わからない。
どうして俺なんかのために泥だらけになりながら餌を探してくれるんだ。
言葉が通じないのがもどかしくてどこか寂しくて。
君と言葉が交わせたら今のこの気持ちがわかるかもしれないのに。
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