一と六つの花


□はじめまして、『赤塚の七人の侍の姫君』です
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小さい頃、両親を喪った。ぼんやりと覚えている記憶は笑顔。どんな時も笑ってた。亡くなる瞬間も笑顔で………

「お姉…ちゃん…?」
「…大丈夫。私が絶対に守るから」

そう言った本人の手の方が震えていて、小さいながらにこの人を支えたいと思った。そして、そんな人の肩を抱いて支える隣の人が羨ましいと思った。
九つの差は、どうしたって埋まらない。ボクはあの人達から見れば小さな妹だ。弱さを見せてくれない。ボクを守る何て言ったあの日から、ボクはあの人のお荷物でしかないんだ。

早く大人になりたい。あの人を、姉さんを支えたい。いや、違う。自由にしてあげたい。もうボクから、解放してあげたい……

「なるほどねぇ。それでセツには内緒でバイトしてるんだ」
「うん。だから、言わないでほしいんだ、トー兄」

クルクルと、ストローを廻しながらいつの間にか染み付いたアヒル口を悪戯に伸ばしながらほぼ一緒に住んでいる幼なじみの松野トド松がクスッと笑った。

「リツのお願いじゃあしょうがないなぁ♪」
「ありがとう、トド松お兄ちゃん♪」

全力で営業スマイルをすると「ンン
ッ」と、無言でカメラを向けられた。撮影禁止なんだけど…まぁ、店長いないから良いか。

「それより、何か食べる?サービスするよ」
「本当?やったー☆じゃあオムライス♪」
「あいよー」

ボクは眼鏡を押し上げながら頷いてキッチンへと引き返した。その後、トド松は予定があるからとオムライスを完食。入れ違いのタイミングで、最早顔馴染みとなったイタリア人が二人来店してくる。白スーツと黒スーツ。

「Ciao!!Bambina♪」
「Ciao、Angelo。また来たぜ。いつもの頼むな」
「りょーかい。ペペロンチーノね」

赤塚から少し離れた高校にボクは通っている。姉さんやかの有名な松野家が通っていた地元の高校ではない。だから、中学の時の様に『赤塚の七人の侍』を知る人はいない。悲しいかな、姉さんを含む7人は地元では負け知らずのヤンチャな悪餓鬼だったから要らんところで有名だった。特に、「オレンジ色には手を出すな」何て言われている。今でもだ。
松野家の六つ子は一卵性。だから、ボクの記憶がある頃からはパーソナルカラーが決められていた。

長男おそ松は血のように赤い色。
次男カラ松は海のよ
うに青い色。
三男チョロ松は秩序を重んじる緑色。

四男一松はミステリアスな紫色。
五男十四松は元気な黄色。
末弟トド松は可愛いピンク色。

六つ子達はパーソナルカラーを身に付けていたから同じ顔でも見分けることは可能だ。ボクや姉さん、トト子ちゃんレベルの幼なじみになると無くても見分けられる。
いきなり話を変えるけれど、脱線はしてないから黙って聞いて。
ボク達姉妹には両親がいない。交通事故で亡くなったから。ボクはまだ小さくて、当時のことはあまり覚えていないけどとにかく、ボクは姉さんと二人家族。頼れる親戚なんかいなくて、施設に入れられそうになった時、松野家六つ子絶対的君主・松代さんがボク達の後見人みたいなモノになってくれた。姉さんが20歳を迎えてアパートを借りるまでボク達は松野家で生活をしていた。六つ子にはパーソナルカラーがある。それを小さい頃のボクが羨ましがったらしい。それを聞いて松代さんがボク達姉妹にも六つ子とお揃いのパーカーやツナギを買ってくれた。

長女雪花は空のように澄んだ水色。
末妹のボク、六花にはオレンジ色。

さっき言ったでしょ
?「オレンジ色には手を出すな」って。それ、ボクの事。何がどうしてそうなったのかは知らないけど姉さんと六つ子兄さん達はボクに過保護でさ。ボクが絡まれたら必ず誰か飛んでくるの。思わず発信機付けられてないか確認したぐらい。とにかく、高校上がるまでは本当過保護で。今も過保護だよ。偶然、さっきトー兄が来店したけど、ほら見て、このLINE。

【上がり時間教えてね♪一緒に帰ろ?】

………コレ、疑問符つける必要ないよね?ね、そう思うでしょ?これで拒否ったらバイトバラされるんだよ。あ〜あ…折角過保護から抜け出せるとおもったのになぁ…
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