黒の教団 食堂での一時

□輪に入らないあなた
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食堂には高く積まれた皿の壁が出来ていた。
初めてそれを見た人は、何事だとビックリすることだろう。


皿の壁の中でアレンが美味しそうに食事をしている。
隣の席には科学班のジョニーとタップが、ポカーンとその状況を見ている。


「相っ変わらず、すごい食欲……」

「俺、ちょっと気分が悪くなってきたかも……ウプ」


そこに談話室から戻ったひとみが通りかかる。
ちょうどいいことにアレンと仲がいい、ジョニーとタップもいるではないか。

そーっと近づき、二人にそっと耳打ちする。


『今日の夜にやることになったから、それまで科学班の研究室にでも連れていってくれない?』

「!!!」


言われた二人もすぐに何の事か分かったようだ。ニッコリ笑いながら、手でオッケーサインを作る。

するとアレンがそれに気づいたようだ。


「あ、ひとみ。リナリーとの話は終わったんですか?」

『うん、終わったわよ!私はこれからまた厨房に戻るわね』

「そうですか……」


アレンが少し寂しそうにしている。
一緒に話したかったのかもしれない。
だけど、こればっかりは無理だ。
一緒にいたら、アレンの歓迎会の準備が出来なくなってしまう。

グッとこらえて、こう話した。


『今はちょっと忙しいんだけど、夜なら時間取れるわよ!』

「本当ですか!?分かりました、それまで待ってますね!」


すかさずジョニーがアレンを誘う。


「じゃぁさ、アレン!それまで俺たち科学班のところへ来なよ!団服の採寸もしたいしさ」


ナイス!ジョニー!
ひとみは親指を立て、ジョニーに感謝する。
なんて上手い誘い出しなんでしょう!


「はい、分かりました。科学班のとこにお邪魔しますね!」

『じゃぁまた夜にね!アレン、ジョニー、タップ!』


三人に手を振って、厨房へと戻っていく。
その後ろ姿をアレンはずっと見ていた。
それにジョニーが気づく。


「なに、アレン。ひとみの事が気になるの?」

「いやっまぁ、そりゃ………」

「そっか、そっかぁ!アレンも大変だな」

「?どういう事ですか?」

「だって、ひとみってすごく人気があるんだよ?」

「そういや、前に隠し撮りをされて大変だったってぼやいてしたな〜!」

「そ、そんなに人気があるんですか?」

「だって、あの神田さえ心を開いているかもと噂があるくらいだよ!」



途端にアレンの表情が曇る。
ひとみはハッキリ否定したが、やはり神田は要注意人物なのかも……


「さて、食べ終わったなら、科学班のとこに行こうか〜!」

「あ、はい!分かりました。片付けてきますね」


三人は食堂を後にして、科学班へ向かった。

遠目にそれを確認したひとみは、すぐさま飾りつけの指示に入る。


【Welcome Allen】のボードを天井から吊り下げる。その周りに輪飾りをキレイにデコレーションする。
これだけでも十分歓迎会の雰囲気は出ている。

後は机とイスをセッティングすれば完了だが、まだ通常営業している為それは最後だ。

大人たちが飲むお酒を冷蔵庫に入れ、冷やす。
ロック用のキューブアイスなど、細かい物の確認もオッケーだ。
後は料理の仕込みの手伝いをして、直前の準備は完了だ。


『よし!後は19時頃にセッティングして終わりだね!』


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