黒の教団 食堂での一時
□無言が多いあなた
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ひとみが食堂へ戻ると、ちょうど任務帰りの神田がいた。その体には医療班で巻いてもらったばかりの包帯があり、とても痛々しい。
『神田、おかえり!』
「ああ」
いつも通りの神田の返事。まるで怪我なんて何ともないような感じだ。
『神田がそんな怪我するなんて…今回の任務、大変だったの…?』
ひとみも神田の噂は聞いている。戦場に立てば誰よりも多くAKUMAと戦うのに、誰よりも少ない傷で帰還するのだという。
「いや、そんなに大変な任務じゃなかった。
ただ使えねー奴がいたせいで、俺までこんな怪我しちまったんだよ」
その状況を思い出したのか、チッと盛大に舌打ちをする。
それにはひとみも苦笑いしかできなかった。
『やっぱり大変だったんじゃない。お疲れ様、
神田。ゆっくりして行ってね』
「………」
神田がこちらを見るが、返事は何ももらえなかった。
代わりに別の事を聞かれる。
「……これから仕事か?」
『ううん、仕事じゃないよ。厨房に取りに行くものがあるだけなんだ。そだ、ちょっと待っててね』
「?」
すぐに厨房へ行き、コムイに渡す為の携帯食を手に取る。そして……
『はい、お茶』
「……ああ」
『んじゃ二人でゆっくりしましょ』
ニッコリ笑ってひとみも自分用に淹れたお茶を飲む。
神田は少し笑いながら、ツッコミを入れた。
「一つは自分用かよ」
『だって私も飲みたいもーん』
いつも刺々しい雰囲気を出してる神田が、食堂の看板娘ひとみと一緒にお茶をして、さらに笑っている。
この余りにも異様な光景に、周りにいる人たちの目は釘付けだった。
「そういやお前、何か取りに来たんじゃないのか?」
『あぁ、うん。お茶を入れた時に持ってきたから大丈夫』
ほらと、携帯食を見せる。
「何だ?それ」
『私が考えて作った携帯食。コムイさんに後で持ってきてって言われてるの』
「自分で取りに来いって言っとけよ」
ひとみは思わず目をパチクリしてしまったが、神田の俺様発言についつい笑ってしまった。
『あはは!私は神田みたいには言えないよ〜。
てか俺様すぎ!』
「チッ。うるせーよ……」
少し食堂に和やかな時間が流れた。
しかし、これ以上ゆっくりもしていられない。
忙しいコムイに携帯食を早く確認してもらわなければならないのだ。
『じゃぁ、神田。私、これから科学班のとこに行ってくるね』
「ああ、わかった」
そう言って腰を上げたところ、突如スピーカーから物凄い声が聞こえてきた。