黒の教団 食堂での一時

□お調子者のあなた
2ページ/6ページ



『はぁ〜〜……』

思わず大きなため息をついたところで、聞き覚えのある声が聞こえた。


「おや、誰かと思えばひとみ嬢ではないか。こんな所におるとは、珍しいのぅ」

『あ、ブックマン!こんにちは』


特徴的な目のメイクに髪形。誰だか一発で分かる見た目だ。

「時にひとみ嬢。何か探しておるのか?」

『あ、はい。実は薬草や漢方の本を探していて……』

「ふむ、薬草や漢方の本か。それならば向こうの本棚に何冊か置いてあったはずじゃ」


さすがはブックマン。ありとあらゆる世界の本や新聞を読破し、さらには本には残らない裏歴史まで記録をしているのだ。

こんな図書室であればどこにどんな本があるかは、すでに把握済なのだろう。
指を指してその本棚を教えてくれた。


『あ、ありがとうございます。助かりましたぁ〜!』

「礼には及ばん」


ブックマンはそう言って、そのまま図書室を出ていった。


『(いつもながら不思議なおじいちゃん……でも本当に助かったぁ)』


ブックマンに教えてもらった本棚に向かい、目当ての本を探す。



部屋の隅の方にある本棚だった為、他の本棚より陽も当たらず暗い。
よく見えないのでランプを持ってこようと引き返えそうとした。


ところが暗がりから出てきた手に手首をぐいっと捕まれ、そのまま本棚に体を押さえ付けられてしまった。


『きゃあっ』


突然の事に頭が追い付かない。


少し声は出たようだが、隅の方なので他の人に声は届かなかったようだ。


一体何が起こっているの………?とぐるぐる考えていたら、今度はぎゅっと抱きしめられてしまった。


『(これは本当にヤバイかも!!!)』


最悪の事態に血の気が引いていく。急いで逃げようと、一生懸命体を捩った。


するとクスクスと笑う声が聞こえる。

「ひとみ、ごめんさ〜。ビックリした?」


捩っていた体がピタッと止まる。
聞き覚えのある声。聞き覚えのある話しグセ。

まさか…


『……ラビ?』


「へへ、あったり〜!」


食堂で働いてる時によく話しかけてくれる、年下の男の子。

時間が合う時は彼の仲間も一緒に、お茶やおしゃべりをした事もある。


『も〜〜…本っっ当にビックリしたぁ……』


思わず体から力が抜ける。よく知っている人の悪戯と分かり、心の底からホッとした。


「ごめんさ〜!ここでひとみに会うなんて思わんくて、ついつい……」

『ついつい、こんな心臓に悪い悪戯をしないでよね!』


驚かされた事について、さすがのひとみも文句を言う。ラビは笑いながらもちゃんと謝ってくる。


しかしひとみは、ハッと気づいた。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ