Fallen Angel ―堕天使―

□第6話
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『黄色いの、何?』

シェリーはグラスを置いて、ティファの後ろの方を指差している。キッチンに置かれているそれは、あの時の黄色い花だ。


「これは“花”よ。見たことない?」
『は、な?』
「七番街スラムじゃ咲いてないもんね。そうだ匂いを嗅いでみて。いい香りがするの」


………花を知らないのか?
ティファとシェリーの会話に驚きを隠せなかった。いくらスラムでは咲かないからと言っても、“花”くらいは知っていて当然だ。それなのに、彼女は……


『いい匂い〜』
「でしょ?そう言えばクラウド、一体このお花どこで見つけてきたの?」
「………壱番魔晄炉から逃げる時に、花売りに押し付けられた」
「何それ!買ったんじゃなくて?」
「……いや、あれはほとんど押し付けだ」


あの時の事を思い出してみても、それが一番妥当な表現だと思う。なかなか強引に肩のベルトに差し込んで、さっさといなくなってしまったんだから。
クスクス笑っているティファを余所に、シェリーはじっと黄色い花を見つめていた。

「そろそろ行かなきゃ、ごゆっくり」

そう言い残してティファは下へと降りていく。


「気に入ったか?」
『うん!キレイ……』


目をキラキラさせながら魅入っている様子に、物を愛でる感情は持ってるのかと、ふっと少し笑ってしまった。

やはり色々とチグハグな彼女。
これを気にしてくれるなとはティファもなかなか難しい事を言うものだ。




すると遅れてジェシーが店へとやって来た。


「ニュース、見た?“魔晄炉の爆発は市民の敵、アバランチの仕業だ”ってガンガン流れてるの!ゾクゾクするよね。顔バレしてないからここは安全だろうけど、色々急がなくちゃ。ねえ、次も一緒なんでしょ?」
「報酬次第だな」
「じゃあ決まり!私が推すから。ティファが行く事になってるんだけど、あの人思想が揺れてるっていうか………爆弾戦争にも乗り気じゃないからいざって時にね」


ティファが乗り気じゃない?あぁ……なんかそれは分かる気がする。ジョニーの一件で、ティファにはまだ覚悟が出来ていないように感じていた。


「こっちも命を預けるわけだから、それならあんたみたいな有能な人がいいもの」


ジェシーはウインクをして、下へと降りて行く。店には俺とシェリーの二人が残された。





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