ひらりと翻り
□第七夜 修行
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修練場の一角。
慣れない組み手に、悪戦苦闘する姿があった。
「そう、そうやって腰を落として踏み込むと、体が安定するのよ」
『あ、なるほど……こう?』
元帥とリナリーから体術の基礎を習う。ちょっとした動きも初めての為、体のバランスを取るのも難しい……
「まずは型を覚えること。それを踏まえて組み手をすると、体が自然と覚えるよ」
『なるほど……』
時代は違えど、やり方はいつでも一緒みたいだ。基本の型を覚えてから、実践形式に入る。でも体にはまだそれをやる為の筋肉がない為、悪戦苦闘してしまう。
「うーむ……河野くんはまず体幹を鍛えるのがいいかもしれないね」
『体幹?』
アスリートやスポーツ選手がトレーニングでやっているアレかな?
「体幹というのは字のごとく、体を支える幹、つまりは軸のことだよ」
「軸をしっかり鍛えるんですね」
「そうだとも、リー」
うーん、体をしっかり鍛える人たちはいつの時代でも同じことを考えてるんだなぁ……
何だか妙に納得してしまった。
「朝晩でやってる筋トレのメニューに付け加えよう」
『はりゃー……』
今でもなかなか慣れず筋肉痛に悩まされているのに、さらにプラスされてしまった。
すると入り口の方からクスクス笑う、笑い声が聞こえてきた。
「よっ、仁美!ずいぶん絞られてるみたいさね?」
『!ラビ!』
そこにいたのは任務に出ていた赤毛の青年だった。
まさかこんなにクタクタになっているところで帰ってくるとは……
あんまり見られたくない姿を見られてしまった。
でも任務から無事に帰ってきて、まずは一安心した。
『お帰りなさい!』
「おかえり、ラビ!」
「たっだいまさ〜!あれ?リナリーもいたんか」
「うん!仁美が少しでも早く強くなれるようにね」
リナリーがニコニコと笑顔で答える。本当にこの気遣いがとてもうれしい。
「そっか!じゃぁ俺も付き合うさ」
『え……?』
「何だよ、仁美!俺がいちゃダメさ?」
『や、違う違う!任務から戻ったばかりだから、疲れてるんじゃないかなって思ったの』
慌ててちゃんと説明する。協力してくれるのはとてもありがたいのだが、無理をさせるのでは意味がない。
「このくらい、大丈夫さ!」
やっぱり鍛えてるだけあるんだなぁ。そういうところでも追い付けるようになりたいと思う。
『本当に大丈夫?無理してない?』
「大丈夫だって!」
拳を胸でどんと叩き、大きく胸を張る。
『わかったわ。ラビ、よろしくね!』
キツい修行だけど、笑顔で再開し始めたのだった。
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