ひらりと翻り

□第四夜 イノセンス
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すると、その人の状態にギョッと驚く。


布か何かで目隠しをしたまま、日本刀を構えているのだ。




サワサワと風が吹き、木の葉が何枚か散る。
その散った木の葉を、目隠しをしたまま真っ二つに切ってしまった。



『……すごぃ………』


あまりのすごさに思わず声を出してしまった。


すると目の前にいる、目隠しをした人がこちらを向く。
目隠しを取りながら、舌打ちをした。



「チッ……何見てやがるんだ」



昨日ラビと一緒に会った、確か神田ユウって人だ。

あの時は初めて会ったってこともあるし、薄暗い通路だったこともあって気づかなかった。


この人………めっちゃ美形じゃない!?


前髪パッツンでポニテにしてるけど、すんごい綺麗な顔………


「おい!」

『っ!』


声をかけられていたことも忘れて、ぼーっと顔を見つめてしまっていたのだ。

さすがに失礼なことをしてしまったので、謝らなきゃ。


『すみません、さっきの技がすごくて………』

「………」


無視されちゃった……
取って付けたような理由だったし、しょうがないかな。
すると神田が口を開いた。


「……なんでこんなとこにいやがる。ラビの奴はどうした?」

『えっと……朝の散歩、です。あとラビはまだ寝てると思う』


質問に対して正直に話す。
どうやら神田の中では、私はラビとセットになってるようだ。



「………エクソシストか?」

『え、あ、はい。一応……』

「どのくらいできる」



……何だか興味は持たれてるみたい。強さとかに対してっぽいけどね。



『や、まだ全然……』

「イノセンスは?」

『今科学班で分析中です』



これも本当。昨日入団の手続きの時、科学班へ預けている。何をどう調べるのか分からないけど。


それよりも彼の修行の邪魔をし続けていることがとても申し訳ない。


『あ、あの!修行の邪魔をしてすみませんでした。もう行きますね』


そう言って、くるりと後ろを向き歩き出そうとする。しかし彼に腕を掴まれ、それを阻まれた。


『え……………?』

「……おい、組み手とかはできんのか?」


組み手?そんなの、やったことない。


『いえ、全然……』

「チッ………………使えねーな」

『…ぇ……………』



……何なの、この人……



正直なところ、確かに私はここに来たばかりだし使えないと思う。

エクソシストとして、AKUMAと戦ってもらうって言われたけど、全然実感も湧いていないし、戦い方すら知らない。


でも私だって、ここに来たくて来た訳じゃない。気づいたらここに居たのだ。帰り方だって分からない。


それなのに、この言い方は何なの?
私のことを何も知らないとは言っても、言ってはいけない言葉ではないだろうか?



『……失礼します』



ぷぃっと背中を向けて歩き出す。

今はこれ以上話していたくない。顔を合わせてもいたくない。

神田を残して、そのまま教団の建物へと戻っていった。




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