ひらりと翻り
□第三夜 初めまして
2ページ/8ページ
「仁美?起きてるさ?」
『! うん、起きてるよ』
ラビさんが迎えに来てくれたようだ。
今日は朝から、少し忙しい。
正式に入団の手続きをした後、体に不調がないかの精密検査をしなければならないらしい。
「お、もう着替えてたんさな。ところで仁美、そのスーツが普段着なんさ?」
私が着替えたのは、仕事の時に着ていたベージュのスーツ。
病室にいる間は病院着だったので、唯一私が持ってきていた私服だ。
『ううん、これは仕事着だよ。仕事帰りに襲われたから……』
「あ、そっか……」
わりぃと一言謝る。ラビさんって本当に優しい男の子なんだなと思う。
部屋を出て、まずはコムイ室長のいる科学班へ行くと言う。
『ラビさんに案内なんて任せちゃって、ごめんね?』
「なーに言ってるんさ!オレと仁美の仲さ?」
そう言ってニコッと笑ってくれる。この笑顔には本当に救われる。
それに私のことを知っている数少ない人の一人。それだけでとても気が楽になる。
「ところで仁美。さん付けはいい加減止めてほしいさ!なんかむず痒い」
『そう?』
「そっ!みんなラビって呼び捨てだしな」
それならみんなと同じように呼び捨てにしようかな、と思う。その方が喜んでくれるみたいだしね。
すると通路の反対側から、男の人が歩いて来るのが見えた。ラビと同じようにスラッとした人だ。
ラビがその人に向かって手を振りながら声をかける。
.