ひらりと翻り

□第一夜 気づくとそこは……
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目を開けると、天井が見える。
でも私には見覚えがない。


しばらくぼーっと天井だけを見つめていた。



変な夢を見た………


死んでしまった私の家族。


特に妹の汐莉が、なんだか壮大な話をしていた。旧約聖書の創世記に載っている、ノアの方舟のお話………

そういや幼稚園の時にお遊戯会でノアの方舟をやったっけ。


でもそれは違うのだと言う。
神様は護ろうとしたの?


でも不思議なのは、夢なのに内容をしっかり覚えている事。
普通はよく分からない内容だと、すぐに忘れたり、ふわっとしか覚えていない。


AKUMAとか、伯爵とか、よく分からない内容なのに覚えている。





『………AKUMA…………』


何となく汐莉が言っていた言葉を呟いた。



「あらっ!?あなた気が付いたのね!?」



そう言うと、上を向いている私の顔を覗き込むように中年の女性が声をかけてきた。


「よかったわ!あなた3日も寝たきりだったのよ?」


ぼーっとする。まだ頭がよく働かない……


しかも今聞こえたのは英語……?


仕事上英語はよく使用するので、聞き取りも話すのも問題はないのだが……何故だ。



私がいるのは日本。私は見た目も日本人だ。

もし、どこかで倒れたのだとしても、声をかけるなら日本語に決まっている。
それなのに、目の前の女性は流暢な英語で話しかけてきた。



よくよく見ると外人さんだ。しかも一昔前のヨーロッパでのナース服のような格好。


そんなことをぐるぐる考えていると、目の前の女性はさらに声をかけてきた。


「あなた、私が話していることは分かる?」


私が返事をしないので、心配しているのだろう。ちゃんと英語で返事をせねば……


『…はい、分かります』

「!?あぁ、よかったわ!心配したのよ?」

『……心配かけてすみません……』

「いいのよ、まだゆっくり休んでいてね!あなたが目を覚ましたことだけ、伝えてくるわ!」



そう言うと、ナース服を着た女性はパタパタと部屋を出ていった。



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