闇の中でも光るモノ

□プロローグ
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零華side


私は冀州侯蘇護の娘・蘇零華(そ れいか)。

優しくてしっかり者のお兄様と、少しおっとりしたお姉様が私の遊び相手であり、親代わり。
お父様は国の領主なのでとても忙しく、たまに食事の時にお会い出来るくらい。

そしてそんな家柄に産まれた事もあり、昔から付き合いのある家の子と結婚する約束になっている。いわゆる許嫁というもの。


周りのお世話をしてくれる侍女たちは、小さい頃から結婚相手を決められて可哀想だという。でも私はそんな事は1度も思った事はない。
だって、その相手は………



『天化くん!待ってぇ』
「おっそいさ、零!」
『違うよ!天化くんが速すぎるんだよー!』


今日も武成王様と一緒に遊びにやって来た天化くん。そう、彼が私の許嫁の相手なの。
昔から私のお父様と武成王様は付き合いがあり、お互いの家によく遊びに行っていた。幼馴染みでいつもよく遊ぶ天化くんだから、許嫁の話もすんなりと受け入れられたんだと思う。


「おわっ!久々に来たけど、やっぱここの花畑はヤベーさ!」
『ヤバい?』
「すっごくキレイって意味さ」
『そっかぁ!うん、ここはいつもヤバいよぉ』


今日は久々に天化くんがうちに来たので、近くのお花畑に来ていた。
2歳年上の天化くんは益々活発になっていて、私が走ってもなかなか追い付けなくなっていた。でも「待って」と言えば、ちゃんと待っててくれる。すごく優しい男の子なんだ。


『よし、出来た!』
「何作ったさ?」
『花冠だよ!ほらっ』
「おー、スゲー!上手いさ!」
『えへへ。はい、天化くんにはこれ!』


そう言いながら私の花冠とお揃いの、少し小さい輪っかを天化くんの手首に付けてあげた。


「これ………」
『天化くんは男の子だから、ブレスレットにしてみたの』
「お揃い?」
『うん、お揃い!』


ニコニコ笑いながら天化くんの手首に花輪を付けてあげる。珍しそうに花輪をしげしげと見つめた後、こちらに顔を向けてきた。


「あんがとな、零!」


溢れんばかりの笑顔。お日様みたいな天化くんと一緒にいると、私の心もぽかぽかと暖かくなってくる。私はそれが大好きだった。





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