上級生の学年対抗実習!

□六年生、始動!
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そこは忍術学園からさほど遠くはない山道。まだ日も上がりきっておらずうっすらと暗い。
そんな中歩いてくるのは少し汚れた忍装束を着た、二人の最上級生だった。


「いや〜、相変わらずドクササコの忍者隊はヘボいな!暴れ足りん!」
「小平太……お前、あれだけ派手にやらかしておいて足りないのか?」
「あぁ!もっとこう、いけいけどんどーん!っとな」
「はぁ……」


サラストの髪を揺らしながら仙蔵は額に手をやり、ため息をついてしまう。もちろん戦闘になった時はとても頼り甲斐のある小平太なのだが、こうも好戦的だと手綱をしっかり握らないととんでもない事になってしまう。普段は長次がいい具合に調整しているが、今回のその役目は仙蔵が負う事となっていたのだ。


「そう言えば学年対抗の実習では、滝夜叉丸は動いてきたか?」
「それがなぁ、チラチラ様子を見られてはいるんだが、動いてはいないんだ」
「ふふ、さすがの滝夜叉丸でもお前が相手じゃ慎重になるんじゃないか?」
「うーん。私としては花形の体育委員会らしく、いけどんに動いて欲しいんだがなぁ!」


話している内容は、今回の学年対抗の四年生についてだ。小平太は頭の後ろで手を組みながら、口を尖らせている。どうやら滝夜叉丸の行動に不満があるようだ。


「ふふ、文次郎も同じ事を言っていたぞ。歯痒くて仕方がないらしい」
「わははは!会計もか!いつもは自信満々な二人が後れを取っているなんてな!」
「意外とそんなもんなのかもしれんな。もう少し暖かく見守ってやれ」


仙蔵が小平太の不満に対してフォローを入れる。それでも小平太としては滝夜叉丸にもう少し積極的に動いて欲しいらしく、ブーブーと口を尖らせたままだ。仙蔵はそんな様子にくつくつと笑いを溢す。


「チェッ!仙蔵んとこはもう終わってるっぽいから、そんな余裕のある事が言えるんだ!」
「まぁ、否定はしない」


仙蔵はニッと笑い、小平太はそれを羨ましそうに見やる。もちろん小平太も滝夜叉丸が優秀な後輩である事はよくわかっているのだが、今回の課題についての動きに関しては遅い。もちろん四年生の課題内容は知らないが、自分らがそのターゲットになっている事は一目瞭然である。


「それにそろそろ五年生が仕掛けて来ないとも限らんからな。他の委員会を気にしてる余裕はなくなるぞ」
「ま、それもそうだな!」


ようやく小平太がいつも通りのにぱっとした笑顔を見せ、口を大きく開けながら笑っていた。
この楽観的に物事を考えられるのが小平太の強みである。








すると少し離れたところから、二人に向かって手を振る人影が見えた。それは言うもがな、自分達の級友であった。


「二人とも!怪我はしてない?」
「あぁ」
「伊作は大丈夫だったかー?」
「あはは。僕はさっき足を滑らせて枝に顔をぶつけたくらいだよ」
「相変わらず不運だな!」


小平太は、わははは!と笑い、仙蔵はやれやれといった表情で忍術学園への帰還していくのだった。





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