上級生の学年対抗実習!

□始まりの日 四年生の場合
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「「「…………………」」」
「おやまあ、面倒くさい」
「ぼ、僕……やれる自信がない……」


カサカサと滝夜叉丸が封書を広げながら、学園長からの課題内容を確認した四年生たち。その感想は、個性が強すぎてチームワークがないと言われているだけあり、バラバラであった。


「僕無理だよぉ!だって兵助くんって五年生の中でも優秀なんだよ〜!」
「ふむ……、今回の実習はなかなかハードルが高いな。まぁ、教科だけではなく実技の成績もナンバー1のこの平滝夜叉丸にかかれば、この程度の課題は軽い軽い!」
「私だってユリコ達と力を合わせれば何てことはないさ!」
「二人とも凄いなー!俺なんて食満先輩相手だからなぁ……」
「はぁ、穴掘りに行きたーい」


若干一名は課題の感想ですらない。きっと先生方もこの調子では四年生の課題達成は難しいと思っているに違いない。

元髪結いで辻斬りの忍者経験の少ないタカ丸。成績優秀が仇となり、自惚れが過ぎる滝夜叉丸。滝夜叉丸への対抗心がすご過ぎて周りが見えなくなる、火器を愛してやまない三木ヱ門。唯一まともかと思われたが笑いの沸点が低すぎて、感情を抑えられない守一郎。どこまでも我が道を突き進む天才トラパーの喜八郎。


この五人でどう協力するのか……



「どうしよう〜………」
「んー、そうですねぇ……別に戦いを挑むワケではないんですから、タカ丸さんの得意分野で攻めるのはどうですかー?」
「え?綾部くん、どういう事?」


困り果てているタカ丸さんに救いの手を差し伸べたのは、意外にも喜八郎で。そしてそれはとても的確なものであった。


「お得意のトーク術で何とかなりそうじゃないですか?」
「おぉ、それは良い案かもしれないな!」
「確かに、タカ丸さんはコミュニケーション能力が高いですもんね!」
「そ、そうかな〜」


喜八郎、滝夜叉丸、守一郎にコミュニケーション能力が高い事を褒められ、照れるタカ丸。確かに誰とでも仲良くなれるのはタカ丸の大いなる武器だ。

安心した顔で今度は三木ヱ門が喜八郎に話しかけていた。


「タカ丸さんは何とかなりそうだな。喜八郎、お前はどうするんだ?」
「僕?んー、僕は考えてる事があるから大丈夫ー」
「そうか…では守一郎はどうするんだ?」
「んんん……まだ用具委員会にも入ったばかりだしな……」
「まだ時間はある。じっくり考えてもよいのでは?」
「………それもそうだな、そうするよ!」


滝夜叉丸が守一郎にそうアドバイスをする。自分の事が大好きなナルシストだが、意外と面倒見がいいのが美点の一つだ。


「ところでやっぱり二人はこのくらいの課題、楽勝なのか!?」


そう言いながら守一郎が見つめるのは、さっき大見得を切っていた滝夜叉丸と三木ヱ門だ。守一郎はキラキラとした尊敬の眼差しをしながら、彼らの答えを待っている。


「な、何を言っているのだ守一郎!そんなの当たり前だろう!」
「そうだとも!この平滝夜叉丸にかかれば、どんな課題だろうとあっという間にクリアだ!」
「…………」


再び簡単だと言ってのける二人。その後ろでは、無表情の喜八郎がじとーっと二人の事を見ているのだった。



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