黒の教団 食堂での一時

□嫉妬されるきみ 前編
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『………………』



まただ………
食堂で着る制服を入れている、私用のロッカー。洋服だけなので特に鍵もないのだが、その為最近頭を悩まされている事がある。

ロッカーを開けると、中に投げ込まれている悪意が見える。
ここ最近は開ける度にため息が出てしまう。


「ひとみ、どうしたのん?………あらっ!?」


ジェリー料理長が私の様子に気づき、ロッカーの中を見て目を丸くする。
今日は枯れて茎などが折られた花がぐちゃっと入っていた。そして、目につくところに分かりやすいメッセージが貼られている。


《 ラビに近づくな 》


別にラビに言い寄っている訳ではない。みんなと同じように笑って話をしているだけ。だって、友達なんだから……

でもラビが好きな人にとっては、それだけでも許せない状況なんだと思う。気持ちは分からないでもないが、こんな行動をして何になるのだろう………


「ひとみのロッカーに近づく人がいたら、すぐに知らせなさい!」


ジェリー料理長が他のスタッフへ伝えて、注意を促してくれる。

実は今までもこういう事がなかった訳ではない。でもこれまではすぐに犯人が見つかっていたし、そこまで悪質ではなかった。でも今回はなかなか陰湿で、さらに尻尾も掴ませてくれない。


「気にするなよ?」
「大丈夫、見つけたらすぐに捕まえるよ!」


周りのスタッフみんなが励ましてくれるので、何とかいつも通り仕事をする事は出来ていた。
でも誰なのか分からない不安はとても大きいものだった。





お昼のピークが過ぎ、食堂は少し空席が目立つようになる。今のうちに空いているテーブルを拭きキレイにするのも仕事のうちだ。

一通り拭き終わり注文口に戻ろうとした時、何やら背筋がゾクッとした。


『…………?』


後ろを振り返るが、特に何もないしこちらを見ている人がいる訳でもない。今日はそんなに寒い訳でもないので、寒気がする事もないハズだ。

何なんだろうと不思議に思っていると、自分に近づく人影に気づいた。


「おい」

『あ、神田!久しぶり〜』


神田は長期任務に出ていたので、会うのは一ヶ月ぶりだ。
嫌な事があったせいか、神田に会えた事を余計に嬉しく感じてしまう。


「…………」

『神田?』

「………お前、何かあったか?」


正直ドキッとしてしまう。この人は本当に鋭い。私はいつも通りにしているハズなのに、何で気づくのだろう?


『んー、特に何もないよ?』

「ばーか、嘘が下手すぎるんだよ」

『あはは………やっぱ神田は誤魔化せないか……』

「ふん」


これはもうしょうがない。
観念して、神田には今回の事を話す事にした。




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