黒の教団 食堂での一時
□嫉妬するあなた
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「ひとみ〜!ひっさしぶりさぁ!」
『おわっ!』
食堂のテーブルを拭いていると、突然かけられた声と背中にズシリとくる重みにビックリする。
独特の話し方で誰なのかはすぐに分かった。
『…….ラビ〜、重いっ!』
「オレのひとみへの愛の重みさ!」
『アホかっ』
こんなやり取りはいつもの事。ラビは惚れやすいのか、色んな女の子に声をかけている。
だから私も本気にせず、流すのがお決まりなのだ。
『テーブルが拭きにくいよ、離れて?』
「大丈夫、ちゃんと拭けてるさ!」
『………そういう問題じゃないんだけど……』
「だって〜!ひとみと会うの、3カ月ぶりさ!充電したいさ!」
……そう言えばそうだ。
ラビとブックマンが長期の任務に入ってから、3カ月も経っていたのだ。
ここのところ、アレンや神田絡みでドタバタしてたせいか、すっかり頭の隅の方にいってしまったようだ。
『そうだよ、ラビ!長期任務お疲れ様!』
「……….まさか、オレの事なんか、全っ然忘れてたさ………?」
『ち、違うよ!ここ最近、バタバタする子が入団したからさ…………………… …………… ……………………………………………………ごめんなさい』
かなり言い訳がましくなってしまったので、速攻で謝る。
すると、後ろから大きなため息が聞こえた。
後ろから抱きつかれているので、吐かれた息が耳に触り、少しくすぐったかった。
「ひとみはひどいさー……オレはひとみに会いたくて、任務頑張ってきたのに……」
『またまた〜、何人の子に同じセリフを言ったのよ?』
いつも通りの会話だった。
ラビも私も、いつも通りだった。だから私はいつも通り『そんな事ないさー!』とか返って来るものだと思っていた。
「……オレ、他の女の子と同じセリフをひとみに言った事ないさ」
『……え?』
いつもと違う、真面目な言葉にドキッとする。
すると急に背中の重みがなくなり、体が軽くなる。
後ろを向くとラビの襟首を神田が掴んでいるようだ。
「てめぇは………帰ってきたらソッコーこれか?」
「ユウ!久しぶりさ〜!」
『神田………』
正直助かった。さっきの真面目なトーンのラビに、なんて返したらいいのか分からなかったのだ。
すると神田がこちらを向いて、舌打ちをしてきた。
「チッ!ひとみ、モヤシにも馬鹿ウサギにも簡単に抱き付かれてんじゃねぇよ」
『……うん』
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