黒の教団 食堂での一時

□無言が多いあなた
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教団の暗い階段を駆け下りる。

夜になると壁に付けられた蝋燭の火しかない為、足下がとても危ない。
今日は満月が出てはいるが、地下へ続く階段には意味の無い事だった。


『ラビ!ブックマン!』

走りながら声をかける。
声をかけられた二人は、地下水路に泊めてある小舟に乗り込むところだった。

「ひとみ!」
「ひとみちゃん?」

ひとみは走って来たせいで息が上がってしまい、ゼイゼイしていた。

『はぁ、間に合ってよかった〜!』

「ひとみちゃん。そんなに走ってまでどうしたんだい?」

これから任務に出るエクソシストの見送りに来ていたコムイに問いかけられる。

「そうさ!めっちゃ息上がってるし。
そんなに俺と離れたくなかったさ〜??」

ラビがぴょんと小舟から飛び降り、いつも通りの軽口を叩く。

『はぁ、実はお二人が長期で任務に出ると聞いたので、はぁ、持って行って欲しいものがあるんです』

「「持って行って欲しいもの?」」

はい、とひとみは頷く。ようやく息も整い、持ってきたバスケットを差し出す。

ラビの軽口は完全にスルーされているようだ。

「これはなんだい?」

『日保ちする携帯食と、差し入れです!』

「ひとみの差し入れっ!なかなか街に着かない時もあっから、日保ちするのも助かるさ〜」

「ひとみ嬢の気遣い、ラビも見習ってほしいもんだわぃ」

ブックマンに褒めてもらい、嬉しくなる。

『コムイ室長。よろしいですか…?』

コムイはニッコリ笑ってくれた。

「もちろんだよ。こういう物なら大歓迎!」

よかったー!とひとみは本当に嬉しそうにしていた。
しばらく会えないのでもう少し話もしたいところ。
しかし汽車の時間もあるので、これ以上出発を遅らせる事はできない。
ひとみからバスケットを受け取り、ラビは小舟に乗り込む。

「じゃー行ってくるさ、ひとみ!」

『うん!気をつけて行ってきてね!』

手を振って、二人の小舟が小さくなるまで見送る。
小舟が見えなくなったところで、コムイがひとみに話しかける。

「ねぇ、ひとみちゃん。さっきの携帯食なんだけど、まだあるのかい?」

『あ、はい。厨房に少し残りがあります』

「よかったら、後で科学班に持ってきてもらってもいいかい?僕もどんな物かちゃんと見てみたいんだ」

コムイはそう言ってウインクをした。
ひとみは、はい!と笑顔で返事をし、まずはそれぞれの持ち場へ戻って行った。


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